近藤啓二

蝿の王の近藤啓二のネタバレレビュー・内容・結末

蝿の王(1963年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

90年代に原作者逝去の前後に?再映画化されている。
本作はそれに遡る初映画化作品で、リバイバル上映で存在を知っていた。

90年代版を観たころはまだ学生であったため、あまり深く感銘は受けなかった。
30年近くたち、しかも60年代の作品としてみると無人島というロケ地、子供たちだけのキャスト、フィルム撮影という、今ではかなりシンプルな要素で成り立つこの映画は、かつての映画が持ちえたパワフルで、ドス黒いエネルギーを秘めていると感じた。
音楽は聖歌隊であった少年たち、のちに原始帰りしていく部族の少年たちが歌っていたものだ。
牧歌的なこの歌とは対照的に、次第に少年たちは変質していく。
暴力に感化されていく少年たちに、まだ未成熟な肉体しか持たない”小さい子供たち”が混じるのが痛々しい。

「少年版・地獄の黙示録」といった感想があったが、まさに的を射ている。
暴力、残酷、戸惑い、後悔、怯え。
救出に来た大人たちと再会して、夢から覚めるように、一瞬にしてみな子供に戻るのが印象的だ。
近藤啓二

近藤啓二