近藤啓二

異端の鳥の近藤啓二のレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.2
公開前の反応、レビューなどから相当の内容だと予想していたが、意外にそこまでではなかった。
理由としてはワンカットが細かく刻まれ、ある意味、現代的なドラマのようにきわめて見やすい作りになっているからだ。
良くも悪くもこの軽さによって、画面の中で積み重なる悲惨な出来事を客観的に観る余地が生まれているように思う。

物語は地名や、出会う人々の名前などで章分けされ、さ迷う少年の「この世の地獄八景亡者巡り」みたいな構成になっている。
そこで宗教や性愛、嫉妬、情熱、食、戦争、尊厳、生と死といった、人間にまつわるあらゆるものを通りすぎて、奈落へと落ちていく少年の姿が描かれている。

ちょうどこれと似た作品で「誰のものでもないチェレ」というハンガリー映画がある。
どちらかといえば、そちらの方が痛々しい鑑賞記憶になり、上記の編集の軽さにより、あまり深刻にはならなかったのもある。

チェレはハンガリー、本作はいま戦争の危機に直面するウクライナと思われるあたりが舞台である。
過酷な時代には実際に、このような目を覆いたくなるような幼少期を過ごす子供たちがいた。
そしてそのような悲惨さは、いまもなおチベット、ウイグル、モンゴルなど、民族浄化を推し進める中華人民共和国という国に引き継がれている。

今年に入って、少女時代に誘拐されたと思われる女性が農村で見つかったというニュースが流れた。
首輪で鎖につながれた彼女は共産党幹部を始め、村中の男の慰み者になっていた。
一人っ子政策などという無知蒙昧な毛沢東、中国共産党の馬鹿げた政策により、男女比率のバランスが崩れた暗愚社会では、毎年4万人以上の少女が性奴として誘拐されていると言われている。

いまもなお文明国家を装いながら、一皮むけばケモノのような国が我が国の隣に現存することは、心にとめておきたい。

【中国の女性、鎖でつながれ小屋に拘束 動画拡散で怒り噴出】
https://news.yahoo.co.jp/articles/c630b8ed2c76d987cb6b0dd0ad2613e2a026ac16
近藤啓二

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