OASIS

スノーピアサーのOASISのレビュー・感想・評価

スノーピアサー(2013年製作の映画)
3.8
2031年の近未来、地球温暖化を食い止めるべく散布された冷却物質CW-7によって氷に包まれた地球。
わずかに生き残った人類を乗せて地球の軌道上を走る列車の中で、下層と上層に分かれた人類が繰り広げるドラマを描く。
監督は「グエムル」「母なる証明」の鬼才ポン・ジュノで、本作が海外デビュー初となる。

原作はフランスのグラフィック・ノベルだそうで、初海外進出となるとどんな大衆向けの作品を作るんだろうと思っていたら、もろすぎるポン・ジュノ臭に戸惑った。
たぶんこの監督の作品を観た事無い人からすれば、「変な映画」と思われる事間違い無いが、知っている人からすれば平常運転で安心という所。
随所に観られる切れ味鋭い(変ともいう)演出をどう捉えるかで感じ方は変わるが、鑑賞後に何かしら強い印象が残るという点では、そのどれもがインパクトに溢れている。
プロテイン・ブロックの羊羹っぽさ、マスクを被り魚を持った男たちと対峙する瞬間のシュールさ、暗視ゴーグルから見える暗闇の血まみれ劇、ティルダ・スウィントンの入れ歯、不死身すぎるスナイパー、そしてシロクマ。
観ている間は変な気持ちになるが、「なんだろう?」と考えさせた時点でもう向こうの勝ちなわけである。

みんな大好き名優ソン・ガンホの渋さは言わずもがな、髭を生やしすぎて誰か分からなくなったクリス・エヴァンス、それ以上に原型をとどめていないティルダ・スウィントンの容姿とネチっこい演説はどれも印象に残る。
気になったのは、かなり重要な人物である○○・○○スの存在が完全にネタバレしている事。
対面する場面が結構衝撃だったので、ポスターにまで出しちゃダメでしょ・・・と思いました。

ポン・ジュノの名前を知らない人や普通の人は完全に拍子抜けする事間違いないが、締め方も含めてこれぞ彼の映画だという点では楽しめました。
列車という存在を人類の縮図と捉えて、カースト制度の破壊から果ては争う事の滑稽さを客観的に見つめるという構図を、ただのアクションに終わらせず上手くドラマに昇華していたと思います。
欲を言えば、列車外からベルトスクロールアクション風に戦う姿を見せてくれると嬉しかったです。
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