アパートの一室で暮らす青年が、隣室との壁が消失してしまったことを契機にして、混沌とした人間関係に巻き込まれてしまう。1983年度、天井桟敷による舞台公演「レミング」を、固定カメラで収録している映像作品。
ひとつの映像ソフトとしてみると、映像・音声ともに不明瞭であり、舞台のライブ感覚がイマイチ伝わってこない。だが、先に映画から入っていると、常連の俳優陣が舞台上でアクションを取っているだけで、不思議な感動を得ることができる。
様々な境遇に置かれている性格の異なる人間たちが、それぞれの感性のもとに人との接触を求めていく。「この混沌とした人間社会において、健常者と狂人の分け隔てはあるのか?」という提起を含ませているところが、さすがと言いたい。
先述した音声不良が残念なところだが、DVD特典には寺山修司の最後のインタビューが収められており、資料的価値はかなりのものがあると思われる。