minaduki

暴行切り裂きジャックのminadukiのレビュー・感想・評価

暴行切り裂きジャック(1976年製作の映画)
3.0
血を写すことを自制していたロマンポルノでは超異色作!

ケーキナイフを陰部に突っ込まれて臍の下まで引き裂かれた下腹部からダラダラと赤黒い血が流れ出す
エロさの前に痛さがくる
私にはそちらの嗜好がない為まるで勃ちません
ロマンポルノとしては珍しい男主役、男主観の物語であるせいかもしれません

血がドクドクとふき出さないこと
ドバーッと派手に飛び散って猟奇者が返り血を浴びないこと
(多分どちらも映倫対策でしょう)
音楽がパヤパヤなこと
そして何より被害者ではなく猟奇者の主観で物語られますから怖くない
ホラーとして禍々しさを欠き、浅いファンタジーにとどまりました

雨中での第一の殺人、自虐女の死体処理迄は緊張感とロマンチシズムに満ち満ちておりました
これはどえらいホラーが始まったぞと興奮いたしました
その後の共犯女とのセックスで女の恍惚の表情に見入りました
この映画中でポルノを感じたのはこのシークエンスのみです
この映画の作家が真にやりたかったのはここまでだったのではないでしょうか

そういえば、この映画の様に物語冒頭のシークエンスがやたらかっこよく、耽美的でロマンチシズムに溢れているのに、その後停滞する映画があったなと思い出しました
そうです!
『サスペリア』(1978年)です
まさかダリオアルジェントがこの映画を観ていたとは思いませんが、映画の出自に同じ匂いを感じました
(ある強烈なイメージがワンシーンとして既に作家の中に出来上がっており、それに頭や尾鰭をつけて物語として成立させた)
サスペリアほどのスタイリッシュさはありませんが、作家が心の底からやりたかったのは、もしかしたらこの冒頭のシークエンスだけだったのではないかと思わせるほどの力がそこにこもっておりました

中盤以降、男が女のくびきから徐々に離れ、自発的に猟奇を楽しむエスカレーションは被害者は上流夫人、女子大生、巫女さん、娼婦、看護師、外国人服飾デザイナーとバラエティにとみますが、私には単線進行に見えて退屈しました

しかし、1976年にこんな破天荒な映画を作ってプログラムピクチャーとして全国公開する日活の腹の括り方は凄い!
ロマンポルノ裁判を戦っていた日活の「猥褻なんでわるいんじゃ!」という咆哮が聞こえるようです
その意味で、この映画はプロデュース日活に⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️です
今なら絶対に作れない映画だと思います

この映画が残って、今観れることに感謝します
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