グラビティボルト

チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

3.6
スマホの機動力を利用したようなこれ以降の2作に比べるとだいぶ王道を行く映画。
駆け出しのポルノ女優がお婆さんから大金の隠された魔法瓶を買った事から深すぎず、浅過ぎない交流が始まる。
二人の出会いの素っ気なさとラストの切り返されない二人が興味深い。

ポルノ女優とお婆さんの二人の関係性、一緒にビンゴやったり買い物の送迎をしたりという淡々とした出来事の連なりで描かれるんだけど当人がどう考えているのか?疑似的な親子なのか、年齢差を超えた友情なのか?をジャッジしない語りが良い。
少なくとも、二人の関係性の変化を雄弁に示すような画や台詞はない。
最初は素っ気なくお婆さんから水道水を渡していたのが、コーヒーに変化していたり、細部の変化で少しずつ提示していく。

一緒に寛いだりゲームしたりする友達との関係性も、グダグダしているようで切実で面白い。
ギャラで友達が事務所と揉める場面は、「タンジェリン」や「フロリダ〜」と同じくドアを勢いよく開けて開口一番罵声を浴びせる女を撮らせたらショーン・ベイカーのアクションの才覚が光る。
ドリー・ヘミングウェイ(ヘミングウェイの孫!)とステラ・メイヴがケンカするシーン、大金を隠し持つ
ヘミングウェイに対してメイヴが一瞬感情を抑えて階段を降りるんだけど、ここの動作がなんとも黒沢清的な抜け殻っぽさがあるのだが、一転して怒号を上げる切り替えぶりが凄かった。

大量のビンゴカードにスタンプを押していく、ポールダンスの練習が上手くいかなくてキレながらアクセル踏み込む、車でお婆さんの家族の墓参りに行く場面、やたらバック〜前進を繰り返すとかコミカルな動作、アクションが印象に残るのも良い。
この動作への拘りと緩急が
「フロリダプロジェクト」での
「CURE」の生肉や「宇宙戦争」の食パン投擲に連なるナプキン投げに繋がるんだよね。投げるという動作で観る映画史!