ルサチマ

ジェラートの天国(神の喜劇)のルサチマのレビュー・感想・評価

5.0
社会的倫理のないモンテイロの生態を見て衝動的に笑い、性的興奮を覚えることそのことの危険性を強烈に自覚させ、現在の在り方そのものを揺さぶられる恐怖に慄く。それでもモンテイロの画面を前にした以上、この映画の非倫理的なシーンの数々に一人悶々としながら笑いを堪えきれなかったことを正直に告白することでしか「忍耐」について語るなど許されない。
モンテイロが映画終盤に自らの肉体に制裁を喰らわせ、倫理なき変態性に自覚した人間があらゆる名声と地位、そして記憶を喪失する成れの果ての姿を露わにしたように、スクリーンに投影されるこの映画は少なくとも私自身と決して立場を異にしておらず、観客である私と同じ地平でこのスクリーンの世界を提示している。
この映画の世界に存在する一人の男の生き様は人によっては当然理解され得ない/許されないものであるにしても、そのスクリーンを眼差す者との同じ地平に役者を立たせた誠実さを決して否定は出来ないし、そういうカメラとの距離の撮り方の模索を続けることでしか映画に立ち向かえる気がしない。
ルサチマ

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