ちーずとまとりんごちょこ

ハンナ・アーレントのちーずとまとりんごちょこのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
4.2
この世界は、大勢のひよりみ菌と、ほんの一握りの善玉菌と悪玉菌でできている。

アイヒマンは、悪玉菌が優勢な時に加勢したひよりみ菌にすぎない。

当時巨悪と騒がれたもの。
現代で巨悪として騒がれるもの(これはいじめなどが良い例)。

蓋を開けてみれば、彼らはおよそ意思なんてものを持ち合わせていない。

じゃあ、貴方は?

優勢な方という基準だけに従って生きるひよりみ菌になるか。

それとも、自分の意思で善悪を判断するのか。

初めてハンナアーレントに出会ったのは高校生の時で、彼女の文章の複雑さに惚れた。
私の足りない頭と知識量では到底及ばないからこそ、強烈に憧れた。

この映画の存在は知っていたし、見れば彼女の考え方を理解するのに役に立つと分かっていたけれど。

カッコつけたくて、何ならつまらない意地を張って、彼女の本をひたすら読み漁った。

最近になって、ようやくこの映画を観た。

もしハンナアーレント好きで、誰かにすすめたいと思うなら、多分彼女の著書よりもこの映画をすすめたほうが良いと思う。

哲学者というのは、分かりきっているから常人なら考えることすらしない単純なことを複雑にしてこねくり回すのが好きな生き物だと思う。

ただ伝えたい事はとってもシンプルで、この映画はそのシンプルな部分だけを描いてくれている。

自分の頭で考えて、自分の意思で動く。
それこそが最も価値のある行動だと、彼女は教えてくれる。

誰も味方してくれなくても、彼女が自分の意志を貫く勇気をくれる。