ユダヤ人絶滅収容所への輸送責任者アイヒマンはデモーニッシュな悪人ではなく、凡庸な役人だった、決まりを執行しただけだということを発表し、袋叩きにあったハンナ=アーレントの伝記映画。
ユダヤ系でフランス内のゲットーも経験したアーレントが、ユダヤ人の中にもナチスへの協力者がいることを指摘したり(他の研究でもこの事実は述べられていた)、アイヒマンを擁護したと誤解されたり、学者仲間から絶交されたり、たいへんな目に遭う。
しかし、彼女は信念をまげず、主張を貫いた。
「思考を思考する」ために講義を取ったハイデカーとの関係も描かれている。
『帰ってきたヒトラー』ではブラック・ユーモアによるナチス、ヒトラーを描き、この映画では硬派の哲学者、ハンナ=アーレントからあの時代の絶対悪を捉えようとする。
そんなドイツ映画がうらやましい。
特攻『永遠の0』や連合艦隊司令官・『山本五十六』を英雄視する姿勢とは違いすぎる。製作者の姿勢は、我々の姿勢でもある。
そこが、うらやましく、悔しい。
ともかく、この映画を見られてよかった。
さらに、アーレント周辺の問題に興味を持った。