FutosiSaito

ハンナ・アーレントのFutosiSaitoのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
4.0
 ユダヤ人絶滅収容所への輸送責任者アイヒマンはデモーニッシュな悪人ではなく、凡庸な役人だった、決まりを執行しただけだということを発表し、袋叩きにあったハンナ=アーレントの伝記映画。
 ユダヤ系でフランス内のゲットーも経験したアーレントが、ユダヤ人の中にもナチスへの協力者がいることを指摘したり(他の研究でもこの事実は述べられていた)、アイヒマンを擁護したと誤解されたり、学者仲間から絶交されたり、たいへんな目に遭う。
 しかし、彼女は信念をまげず、主張を貫いた。
 「思考を思考する」ために講義を取ったハイデカーとの関係も描かれている。
 『帰ってきたヒトラー』ではブラック・ユーモアによるナチス、ヒトラーを描き、この映画では硬派の哲学者、ハンナ=アーレントからあの時代の絶対悪を捉えようとする。
 そんなドイツ映画がうらやましい。
 特攻『永遠の0』や連合艦隊司令官・『山本五十六』を英雄視する姿勢とは違いすぎる。製作者の姿勢は、我々の姿勢でもある。
 そこが、うらやましく、悔しい。
 ともかく、この映画を見られてよかった。
 さらに、アーレント周辺の問題に興味を持った。
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