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R-18文学賞 Vol.2 ジェリー・フィッシュのshishiraizouのレビュー・感想・評価

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性的未分化の季節、少年のように細い肢体の、いかにも金子的少女ふたり。
並んで歩くとき、あるいはベッドに下着姿で並列に横たわるとき、その棒のようなフォルムが際立つ。

カメラの熱視線は二人が手を繋ぐカットでは必ず太ももをフレームに入れるこだわりをみせ、演出は3度目までのキスシーンが良く、カナコ(花井瑠美)のイタズラのようなキスに大谷澪が硬直しつつやがて唇をひらくように柔らかく受け入れてゆく、湿った呼吸が青い官能。

しかし、中盤からの男の登場で失速、話も展開も雑かつありきたり。花井瑠美と少年の絡み、ビデオ屋店長と大谷澪の絡みも熱量の低いつまらないもの。そのツマラナサは、少女たちのお互いへの想いの反映でもあって、男性側の、乳房や秘部への執着の非対称性は、彼女たちの愛の営みが唇と唇をあわせること・手と手を繋ぐこと・身体と身体を密着させること・並んで座ることといった対称性であることと、対をなしています。だから最期のふたりの性的な場面、カナコの指示で大谷澪が片ほうの乳房に口を運ぶ非対称的な仕草は、別れの挨拶となるのでした。

並んだ棒のような、美しい対称性はもう過ぎ去ってしまった。ラスト、雨に建物から躍り出た女のカップルは、ふんわり広がった髪、フェミニンな衣服、丸みを帯びたピアス・・もう少年的な細さの属性はない。通りかかるカナコ、彼女もまた、直線的な身体から丸々とした腹部を有して、金子的清冽さは過去のものとなったことを示していました。

クラゲのガジェットは、いかにも遊離していますが、こういった文学性は、「体当たり演技」を若い女優に納得させるために機能しているところもあるのでしょう。
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