emily

ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界のemilyのレビュー・感想・評価

3.8
 幼なじみで親友のジンジャーとローザ。常に一緒に行動し、ほとんどの時間を二人で過ごしてきた。核の脅威に対する反対運動に参加し、二人は同じ方向を常に向いてるようにみえた。しかしローザがジンジャーの父親ローランドに惹かれ、二人は男女の関係になっていく。次第に二人の間に溝が広がっていき・・・

 思想家で社会問題にも興味があるジンジャーと、いわゆる恋愛気質のローザ。しかし二人は一緒に過ごす事でその境界線を越え、煌びやかな青春時代を共に過ごす。おそろいの服、海、二人の長い髪にきらびやかな光が当たり、どの時間は永遠に続くかに思えた。二人の青春と、核戦争への不安を見事に交差させ、身近な問題と、皆に関わりのある大きな規模での社会問題が平行線に描かれていくのが興味深い。

 不穏な三角関係、二人の興味が徐々に食い違っていく様、抜群の構図と光加減で、表情を描写する。ジンジャーの心の揺れが光の当たり具合と交差し、その真意に徐々に迫っていく。核戦争は気になる。当然、それは大きな問題で、しっかり向き合わなくてはならない問題である。しかしジンジャーとて若干16歳の少女である。親友と父の関係が気にならない訳がない。それを必死に見ないように今やるべき事を頑張れど、心は全く別のところにある。それが溢れるクライマックス、しかし核への不安はしっかりと心に不穏を残し、モヤモヤ感が今日を生きるという目標へと変わっていく。明日ではなく今日。ジンジャーの成長と社会問題が見事に交差し、晴れないモヤモヤ感の中で、わずかな希望を見出していく。
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