ベビーパウダー山崎

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

4.0
自殺で終わらすより知らない他人を殺して、それから長く長く続いていく永遠の孤独を映すのがアケルマン。『アンナの出会い』『囚われの女』『オルメイヤーの阿房宮』もラストは同じ、みな関係性が途切れ、ただ孤独の哀しみに打ちひしがれるのみ。地獄の底より厳しい映画を撮るアケルマン。いくつなのかもよく分からないそれなりに大きな息子が母親にべったりなのも気持ちが悪くて、決まった時間に母子で散歩する異常な距離感、アケルマンはレベル5のマザコン。
キャメラの位置とキャラクターの動線に間違いないから独りよがりの表現なのに映画として成立している。『私君彼彼女』からますますミニマルに、その対象を広げず個人に絞っていくのが強い。おそらく役者にお任せのなあなあの抽象ではなく、到達したい終点定めてがっちり演出しているはず。
終盤の赤ん坊の悲鳴にも似た泣き声からの濡れ場で初めて彼女の感情が垣間見える。ノイズによって日常のルーティンが崩れ、絶望が溢れだしていく。金の(生きていく)ため抱かれた男への激しい拒絶、私しかいない世界。
自殺した作家の深くて暗い表現、洗い流せない孤独が染み付く、渋谷で気軽に浴びるような「映画」でないことだけは確か。団地妻犯罪ものとして西村昭五郎『新・団地妻 売春グループ13号館 』との二本立てをシネロマン池袋で希望。