レオピン

レッド・ドーンのレオピンのレビュー・感想・評価

レッド・ドーン(2012年製作の映画)
3.5
敵には領土だが 俺たちには故郷だ

ジョン・ミリアスの『若き勇者たち』(‘84) のリメイク。
アメリカは独立戦争以来、ホームランドを攻撃されたことは一度もない。それゆえ911は衝撃だった。本国での地上戦を一度も経験したことのない彼らの深層心理は、テロリストになってでも戦いたい、なのだ。

生き残った数名の高校生を中心とした若者たちが山に籠もりゲリラとなって敵と戦う。ティーンの戦いということで少しだけ『ぼくらの七日間戦争』のようなものをイメージしてしまったが全然ちがった。めっさ戦って めっさ死んでいきます。

邦画であればウダウダ感情をぶつけ合って裏切ったり裏切られたりを延々やってしまうんだろうが、ちょっと割りきりが過ぎてB級ホラーばりのフラグが目立つ。一瞬でも感情を見せた人物は直後にお亡くなりになってしまう。この単純さ。途中から誰が生き残るんだろうと思って観ていた。

大口スポンサーが中国資本だったからという理由で急遽敵は中国から北朝鮮に変更。これ撮影が終わった後に全部変更したらしい。土台が崩れているんだが戦闘シーンがそれなりの演出のため見れてしまった。公開は2012年秋か。金正日の死去は2011年の暮れだったから、まだ体制が整っていないという絶妙なタイミングだったのかもしれん。

彼らのバックにはロシアがついていた。ロシア軍と共同で攻めてきた方が説得力も増したが、空からパラシュートで降下してきたのは北朝鮮軍。一応スペツナズの将校も出てきてた。ナイフで刺した傷にGPSを埋め込む。汚いやり口。

戦いの決め手となるのが敵の電波妨害装置なのだが、あれは一体どういうシロモノなのか。ミノフスキー粒子とかに近いものか。これがある為に、アメリカは反撃も出来ずに全土を制圧されたようだが、そんな大事なものを一人の大尉に預けておくなんてなんておバカさん。

どう見ても北朝鮮のような小国がアメリカ本土を侵攻するなんて荒唐無稽な話。北の戦略は、ミサイル実験に明らかなとおりどれだけアメリカに振り向いてもらうかに全力をかけている。北にとってはハリウッド映画でヒールになればなるほど得なのでは。結果この作品が益々つけ上がらせたのではないかと内なる石原節が吠えてます。

オリジナルのパトリック・スウェイジとC・トーマス・ハウエルの兄弟にはクリス・ヘムズワースとジョシュ・ペック
兄貴は弟の彼女エリカ役のイザベル・ルーカスと以前つきあってたのか。そら兄弟仲悪なるな。
GPSを埋め込まれたダリルにはコナー・クルーズ。トムの養子でサイエントロジスト、宗教二世よりセレブ二世の方が重圧かも。
チョウ指揮官にウィル・ユン・リー
海兵隊の生き残りおっさん衆にジェフリー・ディーン・モーガン、マット・ジェラルド、ケネス・チョイ 
おっさんだけにジャンプさせて若者はロープで安全にビルを渡る場面に泣けた。

本作の見所はウルヴァリンズのとるゲリラ戦法やテロリストぶり。イラク帰りのお兄ちゃんが指揮をとるというのも全く皮肉だが、ついこの間まで平和な市民だった者が各々銃を手に立ち上がる。弟のマットは顔つきから変わった。兄のあの事態にも叫び声すら出さずに即座に行動に移せる程に。人間は慣れる。この慣れが恐ろしいんだが。。

ゲリラやレジスタンスを描くのであれば他にいくらでも方法はある。リアルに寄せることで空疎感が勝ってしまう。こういうのを見てリアル戦争にあれこれ口を挟むのだけはほんとやめよう。映画は映画だ。
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