こたつむり

誘拐のこたつむりのレビュー・感想・評価

誘拐(1997年製作の映画)
3.7
♪ 銃声の音はヤリ場の無さに引き金をひかせる
  流れを変える色鮮やかな街に潜んでる
  権力の犬

たかが予算、されど予算。
お金をかければ映画が面白くなる…わけではありませんが、かければかけるほど見た目は良くなる(可能性が高くなる)のは事実です。

そして、それを体現したのが本作。
劇場型犯罪を再現するために、新宿や銀座でロケを行っているんですが…どんだけ手間暇かけたのでしょうか。予算も然ることながら、諸官庁への手続きだって大変でしょうに。

でも、その甲斐あって迫力が違うんです。
靖国通りの前で群衆をかき分ける場面なんて「これは本当にフィクションか?」と思うレベル。話によると無関係の通行人も写っているそうです。日本でもこういう撮影が出来るんですね。

ただ、序盤の展開が良すぎた分。
中盤から終盤にかけて地味になってしまったのは否めず。特に真実が明かされる場面は邦画の悪い部分が凝縮されたような感じでした。いつも思うんですけど、なんでセリフだけで説明しちゃうんでしょうかね。

微妙な表情の変化とか。
カメラ位置やカットの変化とか。
そういう“ビジュアル”的な部分で魅せた方が想像力に訴求してググっと来ると思うんですが…。テレビドラマなら「チャンネルを変えられたらダメ」という制約もありますけど、映画ならば気にする必要はないんじゃないかなあ。

特に本作の場合。
主演である渡哲也さんの漢気が前面に出ていますからね。それを活かした方が良いと思うんです。相棒を務めた永瀬正敏さんも良い感じでしたし。

ちなみに本作の劇場公開は1997年。
邦画がググっと盛り上がるのは翌年からなんですよね(『踊る大捜査線 THE MOVIE』の公開が1998年)。そう考えると、本作の知名度がいまひとつなのは仕方ないのかもしれません。

まあ、そんなわけで。
内容の割には語られない不遇の作品。
邦画特有の残念な部分もありますが、CGではなくリアルに撮った前半は必見だと思います。ちなみに国として観光業に力を入れるならば、こういうロケが増えるように支援した方が良いですよ。
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