しんご

ルパン三世 GREEN vs REDのしんごのレビュー・感想・評価

ルパン三世 GREEN vs RED(2008年製作の映画)
3.4
1980年代、宮崎駿からの推薦を受け押井守を監督とするルパン三世劇場版のプランが持ち上がった。押井さんが打ち出したコンセプトは「ルパンは実在せず、大衆の憧れや妄想が作り上げたフィクションである」というもの。この非常に難解なプロットに上層部は困惑し、結果として押井版ルパンはお蔵入りした。

それから約20年後、その幻のコンセプトを若干踏襲しつつ蘇らせたような作品がこちら。

結論から言うとかなり好みの別れる食べ辛いストーリー。この映画にはルパンがとにかくたくさん出てきますが誰が本物なのかがさっぱり分かりません。その上で「本物というけど本物のルパンってそもそもどんな奴なの?」という哲学的テーマがプロットの核なのでとにかくカオスですが、これはこれで味があってよいかなと。

興味深いのはルパン三世に変装した沢山の男達が集まりルパンのキャラクターを討議するシーン。「やっぱりさ、世間一般のルパンっていやぁ、俺のことだろ?」と語るルパン①に「お前結果何も盗ってないじゃないか!」と食い下がるルパン②のやり取りは完全に「カリオストロの城」(79)を意識しているのが面白い。究極のメタ描写に思わず笑みが零れる。

OVAならではの攻めた実験性は評価に値するけど、これを「娯楽」なのかといえばちょっと疑問ですね。どっちかと言うと「ルパンの教科書」みたいな位置付けになるのでしょうか。

不思議なルパンワールドを体感したい方は是非
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