恥ずかしながら、YouTubeの切り抜き動画で見たのが初めてでした。先ず目につくのがとんでもなく過剰な破壊の表現。ただ、所謂アニメ的な「ドッカーン」みたいなすっ飛ばした動きではない。現実よりも人の感覚、実感としての正しさを優先したがゆえの独特なリアリティとアニメーション特有の動画の快感を併せ持っている（『王立宇宙軍』や『AKIRA』のメカ作画のよう。そういえば、梅津氏は『AKIRA』の原画も描かれていた）。そして18禁ならではの残虐描写。恐ろしいことに、ここでは人が撃ち殺されても全くグロくないのだ。ただひたすら純粋に人体破壊の快楽だけを味わうことができてしまう、究極の娯楽アニメ（ただし大人限定）。端的に言えば、『KITE』はそういう作品になると思う。
刑事の赤井がうどんを食うシーンの部屋などに『チャイナタウン』っぽさが見受けられるように、フィルムノワールの雰囲気で全体が統一されている。エンディングの解釈は意見が分かれるところだろうが、そもそもオープニングの時点で、ヒロインの砂羽（サワ）がカメラと目が合うという不吉な（そして美しい！）予感がしている事は心に留めておくべきだろう。
あと、サワとオブリの距離感が絶妙で、何とも言えない甘酸っぱい感じが。オブリの家のシーンは、もし何かの果物を貪りあってたなら確信犯ってやつだけど、トマトを各々で食べるという所がなかなか秀逸。友達以上、恋人未満ってやつですな。
最後に、ノーカット版とインターナショナル・ヴァージョンの違いについて。結論からいうと、前者が断然おススメ。後者はR-15仕様のため濡れ場がすべてカットされているが、どうも見ていると展開が唐突すぎるというか、自分の感情の起伏が映像についていけなくなるような、変な感覚がしてしまう。全てのカットが演出に組み込まれているということだろうか。しかしR-15版でもアクションシーンはしっかり見ることが可能。さらに言うと、海外盤はビデ倫が付けた無粋なモザイクなど一切無い、完全版とでもいうべきモノになっているので、好きな人はそちらもチェックだ（笑）。ただリージョンコードの問題があるのでその辺は注意。蛇足だが、自分の買った海外盤ブルーレイは向こうの人の雑な仕事のせいで画質が一部メチャ悪くなってました（泣）
[業務連絡]フィルマークスさん！サムネイルの画質が悪すぎます！！何とかしてください！！！
