よしまる

事件のよしまるのレビュー・感想・評価

事件(1978年製作の映画)
4.0
 前回レビューの「帰らざる日々」と同年のキネ旬ランキングで4位、日本アカデミー賞では作品賞含む7部門受賞。
 主演は同じ永島敏行で、この年の1位「サード」と合わせて1978年の主演3作が5位以内だなんて、今でいう菅田将暉とか坂口健太郎並みの売れっ子ぶりw
 取り立てて演技が上手いわけでもなく、超絶イケメンでもない、なのになぜか見入ってしまう。不思議だ。

 大岡昇平の原作は1961年に新聞連載されたのち1977年に単行本でベストセラーになり、翌年には本作が公開されている。
 
 永島が演じる19歳の少年が殺人容疑で逮捕され、物語はほぼほぼその裁判、いわゆる法廷劇となる。
 同じ野村芳太郎監督の「疑惑」(レビュー済)もそうだったように、証言台に立つメンツがとにかく楽しませてくれる。西村晃、森繁久彌、北林谷栄、昭和の名優たちはほんとすごい。まるでドキュメンタリーかのように居合わせた目撃者を飄々と演じてくれるので、事件解決の糸口が見えるまで1時間以上かかっているのに微塵も飽きさせない。

 さらには弁護士丹波哲郎と検事芦田伸介のバトルも熱いんだけれど、特筆すべきは佐分利信の裁判長!
 アメリカ映画の数多い法廷劇と比べてみても引けを取らない存在感で、こんな裁判の在り方がこの当時にあったとは思えず、とても感銘を受けた。

 新藤兼人脚本もさすがだ。殺人容疑の永島敏行が殺した相手は松坂慶子。その妹・大竹しのぶとは駆け落ち。
 フォーマットは良くある三角関係だけれど、事件の真相に近づくとともに次第に明るみに出る主人公の行動、愛する人の真実を容認できない大竹の半ば狂気とも言うべき迫真の演技とともに後半の展開には釘付けになる。
 ふだん自分にはあんまり響かない渡瀬恒彦も、本作は素晴らしかった。腹巻きがイカすw

 結局のところ、真実は当事者にしかわかり得ないという微妙な描写も妙に心に引っかかる。だがそれがいい。ビバ70年代。

 まだ20歳そこそこの大竹の初々しいヌード、松坂は26歳でこちらも円熟。この時代誰もが脱いでたとは言え本編に関係ないオマケのお色気ではなく、役者の本気度と物語の真実味を楽しめるファクターになっている。

 それにしても永島敏行。この年の3作が5位以内と書いてみたものの、大竹しのぶ松坂慶子浅野真弓森下愛子ほか数名とベッドシーンを演じている。
 いやはやあっぱれw