コマミー

再会の街でのコマミーのレビュー・感想・評価

再会の街で(2007年製作の映画)
3.9
【最強のふたり】

※9.11を考える特集。昨年は、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を御紹介しました。遺されたものが、悲しみを"乗り越えようとする"先に、何があるのか。今回御紹介する作品も、そんな作品です。


[アメリカ同時多発テロ]で、妻子を亡くした"チャーリー"は、そのショックで心を固く閉ざしていた。そしてもう一方の主人公の歯科医のルームメイト"アラン"は、チャーリーと対照に家族に恵まれた暮らしをしているが、どこか息苦しさを感じていた…。

本作は、本当にアダム・サンドラーの名演に拍手を贈りたいほどである。複雑な立場でありながらも、悲しみから抜け出そうとする男を、こちらも圧巻するほどの名演だった。
チャーリーは、当時の悲しみから抜け出そうとはしているが、症状の影響であろうか、厄介事をいつも起こしている。自分は、やはりチャーリーには悔しさや罪悪感の"奥"に隠れているように見える。
それゆえに、アランも共に苦悩し、時には"喧嘩"もする。本当にそこが、この作品では限りなく描かれており、こちらも苦しくなるほどに見入ってしまうのだ。

また、本作には「ワンダの巨像」というゲームソフトが登場するのだが、そこにチャーリー自身の「こうなりたい」という感情が込められてたと思う。配給がソニーだからという理由もあるかもしれないが、けっこう的を得た表現であると言える。

悲しみから這い上がろうとする男と、家庭という縄が苦痛に思ってしまう歯科医。二人が交わり、苦楽を共にする事によって、チャーリーにとっては悲しみから少しずつ"余裕"を獲ることが出来、アランもそれが励みになるのだ。

あのフランス映画「最強のふたり」よりも前に、アダム・サンドラーとドン・チードルが、世間の悲しみと偏見の目を相手にして闘う"最強のふたり"を演じていた作品なのでした…。
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