ひこくろ

殺人漫画のひこくろのレビュー・感想・評価

殺人漫画(2013年製作の映画)
3.3
映画の作りが、魅力的な題材を台無しにしているホラーだと思った。

漫画に描かれた通りの殺人事件が起こる。
明らかに殺されているのに、自殺の跡しか見つからない。
亡霊による殺人現場を目の当たりにした刑事が、事件を追えなくなる。
など、魅力的な要素は、それこそ大量にある。
上手く料理すれば、相当に怖く、面白いホラー映画になっただろう。

なのに、見せ方と展開がよくなく、少しも魅力を放ってこない。
見栄えのする、ショッキングで、派手なシーンばかりが描かれ、そうでないシーンが端折られたり、適当に描かれているのがまずよくない。
後半、この部分は少しは持ち直すが、それでも地味な部分を丁寧に描いていないため、物語に説得力が生まれていない。

主人公が刑事たちなのか、漫画家のカン・ジユンなのか、曖昧なのもいまいち。
正体不明の漫画家が事件の鍵を握るとか、漫画家の苦悩に刑事が迫ってくるとか、どちらかに軸を据えれば物語として一気に面白さは増すとわかるだけに、余計に観ていてイライラした。

さらに一番よくないのが、きちんとした伏線を張らずに、後出しで事実が次々と出てくるところだ。
あとで、じつはこうだったとわかる展開にするなら、前もってそこに至る道を作っておくべきだろう。
それがないから、結局、「え、そんなことだったの?」「は、何それ?」って気持ちになってしまう。
ホラー映画に合理性を求める必要は必ずしもないとはいえ、亡霊が怖いのか人間が怖いのか、そのどちらを描きたかったのか、最後までわからない物語にも、すっきりとしないものを感じた。

ホラー部分の演出も不安を煽ってから派手な映像と音で驚かす系がほとんど。
この物語に、こんなチープな演出ばかりなのはどう考えたって合っていない。
もう少しやりようがあったとしか思えない。

なんだか、ホラーブームの時に大量に生まれた日本のダメなホラー映画を観ているかのようだった。
返す返す、もったいないとしか言えない。
ひこくろ

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