女性が苦手、少し高圧的な中年の鑑定士が奇妙な依頼を受けることをきっかけに、その不思議な依頼人に恋をして変わっていくというストーリー。
一見、枯れた中年のラブストーリーとも思えるのですが、ミステリーに分類されているのは、この女性のミステリアスさによるところにあるのかもしれません?
最後まで見ると確かにどんでん返しがあったりして、ミステリーと分かるけれど、見ている最中にはあまりミステリー要素は感じないと思います。
うーん、なんというか不思議な余韻のある物語だなと私は感じました。
まず全体の画面の持つ美しくもやや単調な暗さ、それからモリコーネの音楽、この二つが相まって、ニューシネマパラダイスに通じる何とも言えない情緒的な雰囲気がある。
正直、ミステリーとしてすごく面白いのか、映画としてすごく盛り上がるもののかというとそうではなく、どちらかといえば、最後は少し悲しいような余韻で終わるものではありますが、この音楽と映像、役者陣の雰囲気も相まってなんだかじわじわと地味にハマる人にはハマる、そんな映画ではないかしら。
ラストもバッドエンドとも思えるし、もしかしたらという希望も感じられなくもない、見る人によって印象の変わる映画。
でも私はなんとなくハッピーエンドのような気もする……
なぜならば作中に出てくる
「いかなる贋作の中にも真実は潜む」というのが、伏線なのかなと思うから。
それと、最後のシーンに出てくる店の内装も、途中で出てくるモチーフでもあるけど、ほとぼりがさめたら、タイミングが来たら、という感じもするから。
正直、ミステリーに分類されていることもあって、最初からストーリーはそこまではびっくりしないと思うけど、主人公であるヴァージルの枯れた中年ぶりは雰囲気があるし、クレアの美しさは映像として映えるし、出てくるシーンは少ないものの、密かに鍵を握っているビリーを演じるドナルド・サザーランドはやっぱり存在感がすごい。
続けざまに観るものでもないけど、それこそ時間が経ったら伏線含めて観返してみたい気もする映画でした。