えむえすぷらす

とらわれて夏のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

とらわれて夏(2013年製作の映画)
5.0

後の方はネタバレだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんのでご注意を。

チリコンカーン、ピーチパイと料理シーンが目に浮かぶ映画。
息子役の演技が上手い。あと演出も良い。最初に買い物に行くシークエンスは理由を絵だけで見せていて、この点は流石はライトマン監督と思ってしまった。

ジョシュ・ブローリン、ピーチパイを何回も作って撮影に臨んだとの事。野球や料理、車や家の修理で語る台詞から心優しき脱獄囚という特異なキャラクターが見えてくる。そしてその事はフラッシュバックしてくる断片が徐々に焦点が合ってきて彼の過去が分かる。

母親役のケイト・ウィンスレット。一人だと危うい所があり、息子が助けている。その理由は後に明かされるのですが本作ではブローリンと同様の重さを持った過去として扱われている。

心優しき脱獄囚がシングルマザーとその息子と出会うという物語とまとめられそうですが、実際は長いようで短いレイバーデイ(米は9月第1月曜日)前の数日を丹念に描いてますが物語の時系列で考えるとその後を描く為のプロローグなんだと思った。そのあとの主人公の成長でこの数日に学んだ事を生かして行く。その事は恋人、野球、車などの短いカットで描かれていって最後に仕事が描かれる。その事が再び物語を動かした。

本作は大人のための御伽噺だと思うんですよ。警官のシーン、部屋の中を見て疑問を持たないのかとは映画終わった後で思いましたし。ただ、そういった疑問を映画を見ている最中に感じさせない映画世界でのリアリティラインを守って成立させているのはきちんと演出での計算がされた作品だからだと思います。
何も起きないと不満を書かれている方がいますが中盤むしろ盛ってるんじゃないかと思ったぐらいスリリングな描写が多いです。何を見られてるんだろうねとは思わざるを得ません。そして本作の素晴らしさはその後の物語にあると思う。見てよかった。