ノラネコの呑んで観るシネマ

嗤う分身のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

嗤う分身(2013年製作の映画)
4.5
ドストエフスキーの大胆な新解釈。
コンプレックスの塊の様な主人公は、ある日自分のドッペルゲンガーと出会う。
やがて彼は、快活で人当たりの良い“それ”に人生を乗っ取られてしまう。
面白いのは、周りの人々が同じ顔をした人間が二人いる事を認識しながら、全然気にしない事。
もう一人の自分に脅かされているのは主人公一人の世界にすぎず、ぶっちゃけ他人にとってはどうでも良い事なのだ。
「未来世紀ブラジル」を思わせるディストピア的世界観だが、ここにはビッグブラザーはおらず、描くのはあくまで個人の心象というのがユニーク。
独特のとぼけた笑も良いアクセント。
ツーバージョンの主人公を演じるジェシー・アイゼンバーグが素晴らしく、相変わらずメランコリックなミア・ワシコウスカも魅力的。
なぜか多用されている日本の昭和歌謡や韓国歌謡も、この世界観では斬新に感じる。
陰鬱で皮肉っぽくて可笑しい。
これぞ英国映画。