たく

レッド・ファミリーのたくのレビュー・感想・評価

レッド・ファミリー(2013年製作の映画)
3.6
どんより重い気分にさせられる映画。北朝鮮の工作員として韓国で暗殺を遂行し続ける疑似家族を描いてて、実際にこういうことが行われてるのかは知らないけど、切なすぎる話だったし、北朝鮮ならこういうことがあってもおかしくないと思わせた。スパイや疑似家族という設定、そしてタイトルから「SPY×FAMILY」を連想する人は多いだろうね。キム・ギドクが製作総指揮というのが意外だった。

レストランで幸せそうに食事してる家族が、実は北朝鮮の工作員で、スンヘを班長とするツツジ班として祖国を裏切った人間の暗殺任務を遂行してる。夫役のジェホン、娘役のミンジ、父親役のミョンシク。彼らにはそれぞれ北朝鮮に残してきた守るべき家族がいて、国に家族を人質に取られてやむを得ず工作員をやってるのが切ない。スンヘの幸せそうな表の顔と、工作員としての裏の厳しい態度のギャップにまず引き込まれて、実際に暗殺の場面が出てくるのがけっこうキツい。個人的に思う映画の定石として、「劇中で人殺しをした人間は幸せな結末を迎えられない」というのがあるので、ここで早くもバッドエンドを予想してしまった。

スンヘが最初は南側の人間を「資本主義にかぶれた愚か者」だと思ってたのが、言いたいことを言い合う隣の家族の飾らない関係を目にするうちに価値観が変化していくのが見どころ。メンバーに厳しい彼女が、しだいにメンバーたちと情を交わしていき、それがゆえにある経緯から独断行動で重大なミスを犯してしまうあたりが絶望的。映画の残り時間が少なくなっていくにつれて、この状況をどうやって切り抜けるかとハラハラしたんだけど、最後にスンヘ達が隣の家族の言い争いの場面を自ら演じることで、遂に本当の家族になるのが泣ける。まあ最後にちょっとした救いはあったので、予想に反して完全なるバッドエンドではなかった。
たく

たく