ほーりー

ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろのほーりーのレビュー・感想・評価

4.8
ある夜、ひとりの警察官が拳銃自殺を遂げる。死体の傍には警察上層部がマフィアと癒着している旨が書かれた遺書が置いてあったが、彼の妻はこの遺書を利用してある企みを思いつく…。

フリッツ・ラング監督による刑事ドラマの大傑作。

一時間半もない短い尺ながら、グイグイと観る者を惹きつける見事なストーリーテリングに、魅力的なキャラクター造形、そして(当時としては)過激な暴力描写と、大変見ごたえのある作品である。

とにかく役者陣が素晴らしく、特に以下の主要四人はいずれもそれぞれのキャリアにおいて白眉の演技ではないかと思う。
まず主役のグレン・フォード。没個性的なスターという印象だが、本作では一匹狼の鬼刑事ながら家族思いの心優しき父親という役柄を見事に演じており、ラストの彼の妻との思い出を語るシーンは涙なしでは見ることができない。格好いいとはこういうことさと言わんばかり。

次に狡猾な一番の曲者、自殺した男の妻を演じたジャネット・ノーラン。金のためにはマフィアの親分も平気で恐喝するなど、憎たらしいほどしたたかなキャラクターである。

そして、マフィアの用心棒を演じた若き日のリー・マーヴィン。まさに野獣がそのまま背広を着ているような粗暴で残酷なギャングをエネルギッシュに演じている。

最後極め付けはやはりマーヴィンの情婦役のグロリア・グレアムである。”フィルム・ノワールのヒロイン”と称されたが、一見してキュートなどこでもいそうな顔のこの人が何故そう呼ばれたのかが自分はそれまでわからなかった。しかし、本作を見れば見事納得である。
ほーりー

ほーりー