emily

はじまりは5つ星ホテルからのemilyのレビュー・感想・評価

3.6
世界中の5つ星ホテルがそれに値するかチェックする覆面調査員の独身女性イレーネ。自由気ままな暮らしに高級ホテル、誰もが羨む仕事をしていると思っていたが、人との出会いや、元彼の彼女の妊娠、妹との会話などから、今の自分を見つめなおす事になり・・

 次々訪れる高級ホテル。その一つ一つを細かくチェックしていく。覆面調査員は一切ホテルのサービスを楽しむことはできない。常に目を光らせ、ストップウォッチと温度計とパソコンとにらめっこし、一人孤独に仕事をこなしていく。そこで彼女が見る格差による従業員のサービスのムラ、気づいてるはずなのに気づいてもらえないなど、客側の立場から共感を覚える部分も多い。覆面調査員の仕事内容がしっかり見え、どんな華やかな仕事にもそれと引き換えになる物がある事を改めて思い知る。

 ほとんど家には帰れない。華やかで常に高級ホテルに泊まれる代わりに、家庭も子供も持たない。それでも今までは何の疑問も持っていなかったのだ。旅の合間に出会いがある。人の心を動かすのは人で、イレーネに疑問が生まれ始めるのも人との出会いによってだ。妹との関係が日常に描写される。常に口論になり、「老後はどうするんだ」と妹からは問われる。妹は結婚し子供もいる。イレーネからすればそれは自分が持てなかった物であり、どんなに否定してもそこにはやはり嫉妬心があり、尊敬がある。人は自分のものさしでしか物事を見れない。幸せは人それぞれなのだ。どんな暮らしをしていても、どんなに貧しくても、またどんなにお金があっても、どんな状態でも本人が幸せだと思えたらそれでいいのだ。

 人を羨んでも人にはなれない。何かを得たなら、その分失う物が必ずある。しかしだからこそ本当に大事な物をしっかり大切にすることが出来るのだと思う。人生は旅。このたびは自分の物だ。不幸せだと感じるのは貧乏だからでも、彼氏がいないからでもない。今両手にある物で十分に幸せを感じられるのだ。大切な物はちゃんとその両手にあるのだから。
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