emily

アバウト・タイム 愛おしい時間についてのemilyのレビュー・感想・評価

4.2
イギリス南西部に暮らす青年ティムは21歳の誕生日に父からタイムトラベルできる能力がある事を知らされる。彼女を作るために、失敗してはタイムトラベルし、メアリーという恋人ができるが・・

 ポップな色彩で幸せな家族を綴り、コメディ要素とSF要素を嫌味のないバランスで埋め込み、普遍的で人々が忘れがちな、シンプルながらも重要なメセージを愛いっぱいに包み込む。寄り添う音楽もストーリーを盛り立て、時にセンチメンタルに心情に溶け込んでくる。

 タイムトラベルという特別な能力を備わる事、それはたとえば人とは違う特別な能力なのかもしれない。しかし本作では良い事の後には必ず失う物があり、同時に二つの物は手に入らない事をしっかりと描写している。

決して押し付けがましい事はなく、愛という枠組みの中に、人生の中で積み上げていく、日々の弱い魔法の一つ一つが特別であることを改めて考えさせられる。
 
 過去を何度も生きる事。何度もやり直す中で、観客に見せる物は、起こった事をやり直しても同じだという事。そこには必ず欠点と利点があり、一つの物を手に入れたら、必ず何かを失う。しかしそれは見方次第で何色にも輝くのだ。

 時間は決して巻き戻す事は出来ない。起こった事を変える事は出来ない。それでいいのだ。何かを変えれば、それに伴う影響がほかにも出てくる。何をしてもどんな選択にも必ず後悔がついてくる。そこからどう立て直し生きていくか、大事なのは今この瞬間で、それを大事に生きる事で、未来は開けてくる。たとえ開けなくても、それをどうとらえるかで人生は何倍にも豊かになる。当たり前のようで、ない物を求めて生きてる人にじわりじわりと染み入るようにメッセージを残してくれる。見終わった後に自分の人生を、そうしてダメな自分が愛おしくなる。自分を好きになる事から、愛は始まる。誰かを愛するにはまず自分を好きにならないといけない・・
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