かすとり体力

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅のかすとり体力のレビュー・感想・評価

3.8
アレクサンダー・ペイン監督によるヒューマン・コメディー映画。

以前より評価が高く気になっていたが、モノクロ映画ということで二の足を踏み続けて来たもの。
昨年、モノクロ映画の苦手意識を克服したため(『異端の鳥』『ライトハウス』『C’mon C’mon』『ベルファスト』等々のおかげ)、ついに鑑賞。

感想。良かった。

取り立てて何の事件が起きるわけでもない、静か~~な映画だが、なんというんでしょう、まさにこう「良かった。」という言葉がよく似合う。

まずもって、このストーリー展開で、全く鑑賞者に退屈する隙を与えないというのが神業な気がしてきてる。

だって、大きなプロットのレベルでは、本作のあらすじに記載されたもの以上の事象が起きないんだよ。

そうなるとやはり個々のディテールの描写が面白いというか、神を細部に宿しているというか。
映画における「具体」の力強さを改めて感じさせてくれる作品、という言い方も出来るかもしれない。

ということで、なんということのない事象の連なりながら、具体(個別の描写)で心に残るシーン多数。

あの親戚のデブ兄弟の、田舎の悪いところを人格化したような嫌な感じとか(あの片方、『ホームアローン』の腕白長男らしい)、アバズレ母さん(笑)の超絶胸スカな親戚への啖呵切りとか(弱みを強みに転嫁した逆襲が最高・・・)

あとやはり素晴らしいのはラストシーンね。

ただあのラスト、本質的な解決はしていないというか、純粋な「良きこと」ではないんだけど、父親の弱みを全て包み込んで夢を見続けさせてあげるという意味合いで、「父親を精神的に安楽死させてあげる」エンドのようにも読み取れたが、それは余りにも穿った見方でしょうか・・・。

ということで、噂に違わぬ良作でした。
おすすめ。
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