よしや

プリズナーズのよしやのレビュー・感想・評価

プリズナーズ(2013年製作の映画)
3.7
娘を誘拐された父親が倫理を無視してでも娘探しに奔走する話はリーアムニーソン作品や中島哲也監督の「渇き」なんかを想像しました。

こちらのヒュー・ジャックマン演じるパパもタフなのはタフなんだけど派手なアクションとかは別になくて精神がひたすらにタフ。信仰心が強くて全てに備えている。
これは聖書のノアをイメージしているとかで。この追い込まれたヒューの父親の演技は迫真でこの映画の良いとこかなと。

他にもジェイク・ギレンホール刑事のロキは異教徒の象徴だとか時折挟まれるお祈りなどなど、かなりキリスト的要素が強い。
蛇は悪のモチーフ(エデンの園でアダムをそそのかす)くらいは分かったけれど正直日本人的には馴染みは薄い。
神との戦いみたいなテーマは微妙でした。

パパが容疑者を捕らえて娘の居所を吐かせようと無茶苦茶に拷問するんだけど(ここのシーンはリアルで良い)それが果たした正しいことなのか!みたいなテーマで、それ自体はありきたりではあるけれど、そこに刑事ロキの別角度からの事件探求や他の思わせぶりな要素も絡んで重厚なサスペンスとなっていました。

ここらへんはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の手腕で、緊張感が強く先を読ませないようにちょっとずつタネを出し入れしながらジリジリと真相へ進んでいく作りは得意なんでしょうね。何か変だぞっていう雰囲気を出すのも上手くて、殺風景で暗い映像とかも綺麗でもうこのあたりは流石。ラストを思わせぶりな展開に投げるのが好きなんでしょうか。
爽快なアクションやスピード感、鮮やかなドンデン返しとかないけれど飽きずに観ていられます。

結構倫理観みたいなのを問いかけてくる重い暗い映画で個人的にはサスペンスに強く振ったゴーン・ガールみたいな方がスタイリッシュで好きかな。
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