円柱野郎

思い出のマーニーの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

思い出のマーニー(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

無気力で人との関わりを避けようとする杏奈の様子。
周囲に悪い人たちはいないのに、そういう主人公の態度を見るとワクワクしない冒頭だった。
…が、何故そう無気力であるのかという事情を知ると、その気持ちは分かるかな。
自分の存在意義という、あの年齢に特有の悩みを抱える時期では、輪をかけて心に刺さるのだろうという感じがよく出ていると思う。

杏奈にしか見えないマーニーとの交流はSF(すこしふしぎ)的な雰囲気。
マーニーが杏奈の空想の産物であるのは最初から分かるけれど、そこに逃げ込む心理や、マーニーが実在したというミステリー要素が話を前に動かして引き込まれる部分もいい。
(しょっちゅう行き倒れているのは少し笑ってしまったが…w)
話の真相については、比較的早い段階で「主人公の目が青い」と提示されたので、杏奈とマーニーの関係性が血縁なんだろうなあということは何となく察しがついてしまったけれど、あそこはあえて台詞でなく絵だけで印象付けても良かったかもね。

ただやはり米林監督の演出は確かだけれども、全体的に地に足着き過ぎているというか、ゆっくりと丘を登ってゆっくりと丘を降るような感覚で…。
なので、鑑賞後感は爽やかな気持ちになるものの、「凄いアニメを見た」という高揚感まではあまり感じなかった。
良い作品なんだけど…名作劇場の雰囲気だよね。

同じ様なドラマ性の強い話を描かせても、例えば「風立ちぬ」で宮崎駿が堀越二郎とカプローニを会わせてしまうというような想像性といった部分が薄いというか。
作品として良いものだとは思うのだけど、ジブリの看板のせいで「宮崎駿ならどうするだろうか」とチラリとでも考えてしまうくらいなら、その看板は逆にない方がいいのか…?とも。
円柱野郎

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