♪ わたしはあなたのネコ
あなたが望むように
他には何もいらない
あなたが微笑むならば
『彼女がゾンビになるまでの3日間』
という副題が軽い感触なので、フワッとした気持ちで臨みましたが…怖いとかグロいとかではなく、ひたすらに“厭”な気持ちになる作品でした(しかも「嫌」ではなく「厭」の字を使いたい)。
何しろ、本作の構造は“女性をレイプして妊娠させる”と同じ。加害者(男性)の末席に座する身としては、同輩の愚行に居た堪れない気持ちになります。あー。やだやだ。
それでも前半はまだマシでした。
主人公に同情し、彼女の境遇に寄り添っていれば良いのですからね。
しかし、少しずつ露わになる彼女の問題。
勿論、冒頭から不穏な空気は漂っていて、薄々は気付いていたのですが、それが現実となれば、もう何もかもが“厭”になるのです。もうね。盗んだバイクで走りたい気持ちですよ。
ただ、以前にも書きましたが。
ホラー映画は“人の気持ちを不快にさせる”のが本来の立ち位置。そう考えれば、本作は傑作の範疇でしょう(女性が苦しむ姿を「キキキ」と嗤う嗜好の持ち主以外は…ですけど。いや、そんな人たちは「キキキ」と喜ぶのかもしれません…)。
何よりも絶妙なのが現実的なグロ描写。
下腹部から血が流れたり、トイレの便器が赤く染まったり、気付けば口の中が真っ黒になったり…人体損壊描写は皆無に近いのに、臭気を感じさせる絶妙な演出。お菓子を食べながら観る映画ではありません。
それと作品全体の雰囲気も絶妙。
哀愁を漂わせる“やわらかさ”が逆に気持ち悪いのです。そこまで計算して演出しているのならば…監督さんは策士だと思いますが…実際はどうなのでしょうか。
まあ、そんなわけで。
ゾンビ映画特有の“気の抜けた”感じを期待すると裏切られる作品。知名度は低いようですが、ヒリヒリと刺す痛みで“厭”な気持ちになりたいときはオススメです。