まっつぁんこ

ソロモンの偽証 前篇・事件のまっつぁんこのレビュー・感想・評価

4.4
映画は観るだけじゃない! 「ソロモンの偽証 前篇・事件」と出会うティーチイン試写会&懇親会で鑑賞。

宮部みゆきの原作小説は単行本3冊、文庫本6巻の大作。これをそのまま映画化するわけにはいかない。三部作(以上)になってしまう。(笑)
原作の主人公は野田健一。映画版ではそれが藤野涼子に置き換わっている。監督は長考のすえこの改変を決断。藤野涼子に焦点をあてて原作のエピソードを整理。したがって前篇・事件で野田くんの家族に関する描写は一切なかった。また、原作では柏木の遺体の第一発見者は野田一人だが、野田と藤野涼子の二人で発見するように変わっていた。

前篇・事件をみる限り監督の意図は大成功。ぜひとも早く後篇・裁判を観たいと思った。懇親会のあとムビチケ販売があったので2枚購入。うまくのせられてしまった。

映画の冒頭の遺体発見シーンが印象的だ。監督のティーチインがあったので、この大雪のシーンをどうやって撮ったのか質問した。
事件の発生は1991年12月のクリスマスイブ。リサーチしたところ実際の東京は降雪なし。映画では雪に埋もれた柏木を野田と藤野が掘り出して発見する印象的なシーンに仕上がっていた。
監督による大雪シーンの解説は概略下記のとおり。

東京下町の雪景色は、昨年2月東京に大雪が降った時に撮影。降雪に備えて撮影部隊を待機させていたところ45年ぶりの大雪に見舞われた。プロデューサーに、雪降らなかったらどうする予定だったのか質問したところ「合成」と当然の答えがかえってきた。もくろみ通り雪が降り、「映画の成功を確信した」とのこと。
野田と藤野が道を歩くシーンは6月に長野の倉庫で撮影。塩と発泡スチロールで雪の道を作りブルーバックで演技。
校門の木下ほうか先生のシーンは塩と綿で雪を作り校庭の雪はCGで合成。
ほうか先生を避けて野田と藤野は裏門へまわる。こちらのシーンは大月で撮影。1週間雨が降りそうにない時をねらって3日かけて塩で雪をつくり、3日かけて撮影。雨が降るとおじゃんになるので1週間天気が良くないと撮れない。
白い息はマイナス20°Cで撮影して合成。
雪のシーンだけで、ウン千万の製作費がかかっている。リアリティーを生むため多大な労力とコストをかけた。話自体が中学生の裁判という荒唐無稽なものなのでリアリティーが大切。

同様に雪に埋もれた柏木卓也は人形ですか?という質問もあった。
監督のこたえは、「実物です。雪が目に舞い落ちて溶けるのは後でCG合成してつけた。」

主題歌 U2 の With or Without You は前篇での出番なし。懇親会の時に、なんでこの曲を使ったのか監督に直接おききした。
「まず、第一に U2 が好き。」「わたしもU2 大好きですよ~」
「With or Without You は四分の四拍子の行進曲。後篇の最後に判事、弁護人と検事が横に並んで前進し、ぱっと別れるシーンがありそこで使用している。」
どんなシーンに仕上がっているのか観るのが楽しみになった。

あと、もうひとつ「松子は後篇にも出るんですか?」という質問をした。
「出る。交通事故にあう直前のできごとのシーンがある。」
エンドロールにワイヤーアクション担当のクレジットがあったが、どのシーンでワイヤーが使われているのかわからなかった。それも質問したところ、松子が交通事故で車にふっとばされるシーンで使われていることがわかった。

くだくだ色々なこと書いたけど、映画をみないと良くわからないと思う。
監督はこの映画を 「勇気の映画」 とひとことで表現していた。ぜひご自分で「勇気」を確認することをおすすめします。(笑)