まっつぁんこ

ザリガニの鳴くところのまっつぁんこのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.8
ディーリア・オーエンズの原作は2018年に上梓され2020年に早川書房から邦訳版が出版された。
原作を読み、映画化を知って楽しみにしていた。
原作は長大でカイア6歳からその死までの長い期間を描いている。

映画もほぼ原作のとおり。
半世紀を超える物語を映画にするのだから大幅に省略されている。
映画だけ観てもわかりにくいところがあるだろう。
たぶん原作を読んでから観た方がアタマにすっと入っていくだろう。

映画の冒頭はチェイスの変死体の発見。
火の見櫓から転落して死亡していた。
周囲の湿った地面に足跡はなく、火の見櫓の柱等に指紋もない。
転落事故が疑われる状況であった。
ところがチェイスの衣服に赤いセーターの繊維が付着。
いつも身に着けていたホタテ貝のネックレスが無くなっていた。

証拠があるわけではないが保安官はみんなの嫌われ者「湿地の少女」に嫌疑をかける。
原作ではカイアが捕まるまで色々攻防がくりひろげられるが映画ではあっさりと捕まってしまう😄
そして弁護士トム・ミルトンが登場してカイアの壮烈な人生が巻き戻されて語られる。
その後は裁判のシーンが大半となり、カイアとテイトの初恋と別れやチェイスとの交際が描かれる。

この部分での原作との大きな違いは、湿地から火の見櫓へ海を渡る小舟の目撃譚が無くなっているところ。
たしかにこの部分を描くと長くなってしまう。
が、結構重要な部分なので多少尺がのびてもうまく入れ込んで欲しかった。
文章ではわかりにくいところを映像化するチャンスだったのに惜しい。
もっとも、暗い海面のシーンになるから分かりにくくなるだけだったかもしれない。
そのあたりは製作者も考えた上でのことだったのだろう。

裁判の結果が出るともうあまり尺は残っていなかった(笑)
あとはあっと驚く結末が待っている。
全体を通してみると長大な原作をうまく省略して映画化したとはいえやや駆け足感は否めない。
原作の文章を読むだけではイメージのわきにくい湿地や火の見櫓のようすが映像化されて良かった。