わたがし

リトルプリンス 星の王子さまと私のわたがしのレビュー・感想・評価

5.0
 すっかり忘れていたワクワク&ドキドキ感、原始的な感動、理屈のない涙、ホコリのかぶった感情が一気に次々と引き出されて身体のゾワゾワが止まらない。「俺はスレてないし大人になんかなっていない!」とずっと高を括ってきたけれど、本当は自分もずいぶん良くも悪くも大人になってしまっていたのだなと誇らしい気持ちと信じられないぐらい切ない気持ちが同時に押し寄せてくる。
 絵本のパートと現実のパートでアニメの種類が異なっていて、現実パートのCGアニメ場面は現在のピクサーやDWが目指しているリアル思向の真逆をゆく表現主義的な嘘っぽさがあり、そんな世界観の下で親に生活を威圧的に管理される女の子の葛藤が描かれるシーンから涙があふれて止まらない。
 お話が進んでいくと同時にストップモーションアニメ場面とCGアニメ場面の境目はどんどん曖昧になっていき、やがて夢は現実を飲みこみ、夢こそが圧倒的「現実」になるという幸せがとまらない展開。そんな幸せの中にはもちろん悲しいこともあるけれど、そんな悲しみさえもこの映画はあっという間に喜びにスルリと変えてしまう。なんて嘘味のないピュアさ。なんて偽りの匂いなきぬくもり。テーマそのまま、まるで自分が子供に戻ったような感覚になる。
 圧倒的、というほどではないにせよ3D演出も本当に楽しくて、物語上ちゃんと意義と効果のある使い方がされていている。何よりストップモーション場面での3Dが相性抜群で本当に輝いていて「画面越しに確かに存在している」感が物凄い。その感じ方によってCGアニメパートのリアリティのニュアンスの感じ方もまた違ってくると思うので、機会があれば二回目は2Dでも観てみたいと思った。
 こんなにも心がほっとする映画も久しぶりに観た。軽率な使われ方ばかりされるので普段はあまり口にしない言葉なのだけれど、この機会に宣言したい。絶対に子供心を忘れない大人になる!絶対に!
わたがし

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