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ウォーリアーのエディのレビュー・感想・評価

ウォーリアー(2011年製作の映画)
3.8
総合格闘技のトップを目指し、海兵隊の元英雄の弟と元格闘技家で現在は教師をしている兄がリングで死闘を繰り広げるアクションドラマ。突っ込みどころ満載の設定や練習過程は格闘技好きには不満だろうし、スポーツ映画としても脚本の練りが足りないと思う。しかし、トムハーディの魅力と勢いで最後まで見せてくれる。冷静に考えると、格闘技映画の超名作「ロッキー」なんかよりはるかに作りが粗いのだが、それなりに感動してしまった。

学生時代レスリングチャンピオンで名を馳せていたトミーはその後海兵隊に入り戦地の英雄になったが、人知れず帰国をしていた。ぶらぶらしていたトミーだが、あるとき総合格闘技スパルタのチャンピオンマッチが行われると知り応募する。
一方、トミーの兄ブレンダンは元総合格闘技家だったが、怪我をしたので、現在は教師をしながら副業でアマチュア格闘技をしていた。しかし、休職させられたことで家が差し押さえられることになったので、一攫千金を狙いスパルタの狭き門にくぐりこむ。
そこは世界の頂点を目指し各国から凄腕が集まるリングの地獄だった。。。

無名の選手がトップを目指して戦うストーリーは映画「ロッキー」にかなり似ているが、ロッキーと比べると必死の練習シーンがない。ロッキーは数十年前の映画なのに、冷凍倉庫の中で肉塊を連打する、生卵一気飲みなど、ストイックさを象徴するいくつもの強烈なシーンが忘れられない。しかし、この映画は二人の鬼気迫る練習をあまり感じることはできないのだ。
もっと言うと、ブレンダンがリングに上がる動機は丁寧に描いている一方で、トニーがリングに上がる動機が一向に見えない。なので、最初はブレンダンに共感し、トニーは謎の男的な位置づけになってしまう。

二人の兄弟喧嘩を描くだけならこれでも構わないのだが、このスパルタのチャンピオンシップの8名に選ばれるだけでも大変なのに、現役時代大した成果も出していない二人がひょいひょいと選ばれる理由がかなり不明確だ。特に兄は高校時代も選手としても全く芽が出なかったのに突如開眼するのはご都合主義丸出し。
こんなにふざけた連中がチャンピオンシップに上がること自体がおかしいので、真の格闘技好きはこの設定と練習の少なさの脚本に腹が立つと思う。

しかし、選ばれて実際に試合をしてからはかなり感動する。兄も弟も素晴らしい試合を見せてくれる。トムハーディーは良くぞここまで磨き上げたという見事な体つきなので、確かにこいつなら良い線いけると思わせてくれるのだ。

正直、自分には父とトミーの葛藤を十分に描いているとは思えなかったし、華々しい弟と、下に見られていたブレンダンという「トミーとブレンダンの因縁」も十分に描ききれているとは思わないので、映画の完成度としてはどうかと思う。

しかし、感動したかというと、試合中何度も銘目頭が熱くなった。
自分は評論家じゃないので、感動させてもらったから(突っ込みどころはいろいろあるけど)これはこれでアリの良い映画だろうと思った次第。
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