城定のデコトラシリーズはこれでほぼ視聴済み。なんだかんだで嫌いじゃないんだ。

今作でもそうなんだけど、「映画」しているのが嬉しいじゃないか。昨今の「バカでもわかる映画」、すなわちべらべらと自分の気持ちを喋り状況も喋り独白を多用し、言うなれば「映画の皮をかぶったもの」が蔓延っている中でしっかりと映画しているのがいいんだよ。お前は城定作品だからそう思っているだけだって突っ込まれそうだけどどうにも見ていてそう思うんだ。

特に引きのシーンが多いのが嬉しい。黒沢清なんかが得意な引きのショットは城定作品でも定番だ。どうも僕はこの引きのシーンに弱い。アップ、アップの繰り返しがある映画には辟易するんだけど、引きのシーンが多いとそこから「何かを読み取ろう」とさせてくれる。それはこんなポンコツ低予算映画でもだ。それだけでも僕はこの映画はありなんだ。

吉岡睦夫が泥にまみれたあと香西にホースの水をかけられるシーンなんかまさにそれ。吉岡のダメなところ（それはどの人間も持っているダメなところだ）を香西は洗い流す。しかも乱暴だけど優しく。決してドラマチックにはしないけど優しい。それこそが城定映画の「人間の肯定」なんだと勝手に思ってしまう。

最後も当然いい。磯田を捨てて香西はトラックを走らす。そのトラックを懸命に追いかける磯田。そう、城定映画は走る。走る。僕らも走らされる。磯田は何を言っているかわからないけど絶叫している。香西はトラックを止める。でも磯田には近寄らない。そして多く語らない。

ダメだよ、こんな映画なのにぐっとくるじゃないか。演技なんかポンコツ中のポンコツなのに。でもそのポンコツ感がかえって好きだ（濱口竜介が撮った映画では演技ポンコツでもみんな賞賛するのにＡＶ女優主演の映画では演技ポンコツなのをみんな蔑むのはある種の権力性なのではとまで思っている。穿っているか）。

これはちゃんと「映画」である。

• #ろくと城定秀夫

記録

「デコトラギャル奈美」シリーズは全て鑑賞してしまったので最近は派生シリーズの「ダンプガール」シリーズにも手を出してましてん
「ダンプガール」シリーズは城定監督じゃないんで期待してなかったんですが意外と良作でウキウキしましてね
ただ「デコトラギャル」シリーズの城定監督作品で唯一まだ観てなかった本作みたら、やっぱりクオリティの違いに度肝抜かれましたわ！やっぱり城定秀夫は天才やなぁ！

長距離トラックの運転手の麻里は久々に地元に戻る、しばらく長距離は休み知り合いの運送会社で働くことにするが、そこで互いに初体験をし損ねた相手である幼馴染と再開する…、って話

もうな冒頭のドタバタ喜劇のシーンからして最高な！彼氏の浮気にキレた麻里の姉が包丁を振り回し、逃げ回る彼氏に巻き込まれる長屋の人々、そして突っ込んでくるデコトラ
間違いなく楽しい作品になるぞ！って期待に無い胸踊るシーンですわな

元スケ番で今はデコトラが恋人のヒロイン麻里は当然ながらバージンでしてね
幼馴染も麻里との初体験を逃したトラウマからか？いまだに童貞を引きずってましてね…
久々の再会にギクシャクしながらも見栄を張り合うふたりの、まぁ可愛らしいこと！
「もう22だぜ、まだ童貞なわけないじゃないか…」
「私だって、行った先々で男を取っ替え引っ替えだし…」
そんなふたりが周囲の後押しもありながら男女の関係になっていくんですが、これがもうキュンが止まらんのですわ！
ふたりがデートで観に行くのが「デコトラギャル奈美」だったりな、混浴温泉のシーンの距離感とかな、麻里もビール飲め！のシーンとかな…
最高の童貞映画でしたわ！キュンキュン

さらにそれに麻里の姉と、糞彼氏のドラマも絡みましてね
金なし、職なし、甲斐性なしな吉岡睦雄がマヂ糞野郎でしてね、安定の吉岡さんやなぁ、こんなカマキリ顔の男捨ててまぇ！なってたんですがな
最後はやっぱり漢気見せてくれるがなぁ…泣けるぜぇ、なりましたわ！スンスン

普段はポンコツホラーとかポンコツエロホラーとか観てるマシンボーイですが、やっぱりこういうみんなが幸せになる優しいエロ映画観ると心が洗われますなぁ
よし！洗われた分だけまた血飛沫が散り内臓がこぼれる映画いっぱい観れるぞ！