わたがし

テッド 2のわたがしのレビュー・感想・評価

テッド 2(2015年製作の映画)
5.0
 最高に好き。こういうテッドを観たかったんだ俺は!という幸せな気持ちがあふれすぎて難波の街が崩れた。オープニングクレジットの煌びやかさ。何という幸福な下品感。綺麗で心地の良いカット割り。テレビと映画の中間地点の快感。
 前作は正直な話、かなりどうでも良かった。どうでも良かったし好きじゃなかった。好きなのは下ネタと時々発動される理不尽な残酷ネタぐらいのものだった。
 でも今回のこの言いようのない幸福感は何だ。何だ!!ちゃんとした「映画」としての面白さは何だ。今回はどうあがいても人間と同じように人権を得ることのできないテッドの話。マイノリティが踏ん張って世間に認められようとする話。その時点で映画として充分に熱いし燃えるし大好き。そしてそこに微妙に絡まってくるラブロマンス。いろいろ吸いまくるアマンダ・セイフライドの驚異的なかわいさ。前作があれなので軽い気持ちで観たのに、蓋を開けてみるとむちゃくちゃに「映画的な」面白さに溢れていて、それでいて「本当に良くできているなー!」と言いたくなるほどに良くできている。何だこれは。本当にあのセスさんが撮った映画なのか。
 そしてふざけているだけではなくちゃんとガッツリと社会を皮肉り散らかしているギャグ(単純に暴力的なだけのギャグもあるのがまた好き)の素晴らしすぎてもはや美しさすら感じられるあの感じ。メインの「テッドは人間になれない」は種差別問題に関連するものだし、不妊治療におけるドナー問題、児童ポルノ問題、裁判は結局有能な弁護士がいる側が勝つんだ問題などなど、単にふざけているだけではなくいちいち社会、いや世界に自己流に難癖をつけていて、それでいてシリアスにならずにあくまで片手間で難癖をつけているあの余裕感が最高にクールじゃないか。クールってのはこういうことなんだ。
 演出だって前作とは比較にならないぐらいカッコ良い。前作はテレビのバラエティのような単調な画にカットをポンポン割っているだけの印象だったのに、今回はしっかり芝居を魅せるし、図書館のモンタージュだってバカレトロっぽい工夫満載で最高にカッコ良い。音楽のセンスだってまるでハズさないしギャグを切り取るタイミングだって底意地が悪くてハイセンスで本当に大好き。好きが溢れている。本当に好き。アマンダ・セイフライド好き。
 自分でもわからないくらいにこの映画が好き。何なんだろう。本当に酷いギャグもたくさんあるし(時事ネタ&故人ネタの酷さ)自分は散々に弱い者いじめをするくせに自分の人権だけは主張するとんでもないやつが主人公なのに、なぜかこの映画を愛せずにはいられない。つまるところ自分がそういう人間だからなのか。そうだ俺はクソなんだ。
 ラストの赤ちゃんに向かってジョンの言うあの台詞に至っては泣きそうになってしまった。もしかしたら僕にもテッドがいたのかもしれない。でも気がつかないうちに自分で消してしまっていたのかもしれない。そしてその自分の中にもういるはずのないテッドが、この映画でまた少し目覚めたような、息を吹き返したような、そんな感じがする。
 下品はマイノリティだ。社会の矛盾をゲラゲラ笑いながらいじるのもマイノリティだ。世間はマイノリティを嫌うし、抹消したがる。でも僕らにだって人権はある。発言権がある。表現権がある!あるんだぞ!というあのフランスの例の射殺事件問題にも繋がるメッセージ(というほどのものでもない、というこの映画のスタンスがまた好き)を感じた。表現に優劣なんかない。下品だから格が下、上品だから上なんていうことはないんだ。みんな表現してクサ吸おうぜ!!!
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