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FRANK ーフランクーのKuutaのレビュー・感想・評価

FRANK ーフランクー(2014年製作の映画)
3.5
「ルーム」のレニー・アブラハムソン監督作品。凡人が変人の集まるバンドに入って調和をぶち壊しにしてしまう話。どこまでも凡人な青年ジョン(ドーナル・グリーソン)が彼なりにバンドの役に立とうとするが…。

自作の曲をフランクとクララにあっさり乗っ取られる絶望感。「創造力には辛い経験が必要」と信じ込んで、山籠りレコーディングの様子を嬉々としてツイッターにアップするような、自己顕示欲に満ちた、この上ない凡人。王道の映画なら、ジョンが音楽の力で自己実現する展開に持っていくだろうが、虚飾に満ちた自己実現なんて、何の意味もない事がこの映画を見るとよく分かる(この感想をジョンのようにFilmarksに上げている自分もまた凡人…)。

フランクが完璧な天才、ではないのがこの映画のポイントだと思う。彼の曲にそのキャラクターが投影されていて、前衛的で不協和音混じりで、それでも一瞬「あ、良いかも」と思わせる不思議な魅力がある。奇をてらっているだけではない絶妙なバランス(それをジョンが壊してしまう)。フランクの「自分の表情の説明」はどこかSNS的に感じられたし、フランクも当初はYouTubeの再生数に素直に喜んでいた。だが、バンドの仲間を失うと急速に弱っていく。フランクを支える他のメンバーの包容力が描かれていて、ちゃんとしたバンドの映画になっている所が良い。

フランクもジョンも、生まれた境遇はさして変わらない。なのにジョンはラストでバンドの輪に入れない。書くべきテーマが見つからないというジョンと、カーペットの毛で良曲を作ってしまうフランクの対比が残酷。ドンの葬式で置かれたイルカのぬいぐるみが気になった。言葉ではなく周波数で分かり合える仲間の象徴?70点。
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