このレビューはネタバレを含みます
SMはロールプレイング。
そういう意味では面白く見た。
女優と演出家の関係は支配関係にも似て、どちらがどちらを支配しているのか、危うい拮抗を経て、関係は時に逆転し…
そうなんだよなあ。と思いつつ、その関係の滑稽さを笑い飛ばす結末に、ちょっと物足りなさを感じた。
隷従を求める男が、女の支配欲を引き出し、女に支配者になることを強要する。
被虐と加虐が逆転する、倒錯は良いのだけれど、作中の台詞にもあるように、女性蔑視的といえば、そう。
でもそれを言っちゃあ、おしまいというか、SM関係に性差別の概念を持ち込んで我に返らせちゃいけないと思うんだよな、ロールプレイングという意味でもな。
女は自由! そういう意味では小気味好いんだけど。
見事な会話劇、
ワンダはきっと、彼の婚約者に彼の性癖を暴露する、
辻褄は合う、
でも滑稽な現実よりも徹底した悪夢を見たかった気がする。
会話劇として、舞台作品の映画化として、よく出来てるなと感じただけに、どうも物足りなかった。
原作の彼は彼女を寝取った相手であるギリシャ人の男のほうに恋してるのよ、という示唆は良かったな。女に蔑まれたかったのではなく、女を通して男に鞭打たれたかった? なるほどな。
これな、男同士、もしくは、女同士で見たかった気もする…よな。
女優と演出家(劇作家もしくは映画監督)という関係をシニカルに扱ってるのは良いんだけども。
結末がな…もっと破滅的でも良かったような気もする。物足りなかった。