こたつむり

ぼんとリンちゃんのこたつむりのレビュー・感想・評価

ぼんとリンちゃん(2014年製作の映画)
4.0
♪ 渇いた心で駆け抜ける
  ごめんね 何もできなくて
  痛みを分かち合うことさえ
  あなたは許してくれない

かなりマニアックな作品ですね。
確実に人を選ぶと思います。同人誌とか腐女子とかボーイズラブとかに興味がある、もしくは理解がある…そんな層に向けた物語です。

しかも、描いたのは俊英・小林啓一監督。
細かいところまで配慮した演出と、キラキラ感満載の筆致は見事なまでに“一風変わった青春”を切り取っていて、リアリティが半端じゃありません。

特に見事なのは主人公を演じた佐倉絵麻さん。
小難しい言い回しが好きだったり、やたらと早口だったり、小刻みに首を動かしたり…年末の有明付近で見かける人たちをばっちりトレース。思わず既視感が作動するレベルです。

それに距離感が絶妙なんですね。
いわゆる“オタク”を批判しているだけではなく、愛情も注いでいるので“痛くて気持ちが良い”感覚に仕上がっているのです。監督さんも同好の士なんですかね。

あと、題材に“性の香り”があるのも納得。
あまり詳しくはないのですが“そちら方面”でビジュアルに恵まれると、仲間内で爛れた関係になることが多いらしく、風俗も身近になるとか。僕も「姫」と呼ばれていた女性を知っていますが…嗚呼、これ以上書くのは止めておきましょう。

まあ、そんなわけで。
若ければ誰にだって可能性はある…なんて綺麗な上澄みを描きながらも、なかなかエグイところを突いてくる物語。音声のバランスが悪いのでヘッドフォンを付けて“ひっそり”と鑑賞することをオススメします。

最後に余談として。
本作の小道具で気になったのはゲーム。
どこかで見たことがある画面だな…と思ったら、やっぱり『ICO』でした。男の子と女の子がずっと手を繋いでいるゲームなので、本作に通じるものがありますね。こういう“こだわり”が流石です。

なので、劇中に出てくる同人誌やイラストも同じように“こだわり”があるのかもしれません。好きな人は要チェックだと思います。
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