前方後円墳

寵愛 ‐ちょうあい‐の前方後円墳のレビュー・感想・評価

寵愛 ‐ちょうあい‐(2000年製作の映画)
4.0
小説家の男(オ・ジホ)とヌードモデルの女(イ・ジヒョン)との愛の物語だ。
白い部屋で絡み合う白い肉体の一つ一つの動きはフレーズであり、聴くことのできない音楽を奏でている。その悲しき肉体の舞はとても美しい。
性愛の描写はエロスではなく、静かな愛撫と肉体の絡み合いが映像芸術として存在している。男の苦しみと女の哀しみは多くを語らず、ただ白い部屋で描写される。女を抱くことでしか愛を示すことができない男の哀しみと、男に抱かれることでしか癒されることができない女の哀しみの交わりが沈黙の交歓としてクライマックスへと静かに足音を立てている。
彼らの物語には生々しさが伴わない。もちろん他の男を愛する女への男の嫉妬と苦しみや、本当に愛してもらえない女の苦しみが提示されているが、白い部屋でのお芝居のようにただエピソードとして通り過ぎていくだけだ。
まるでファンタジーのように現実味のない世界があり、描かれているのはメンタルの交わりではなく純粋な肉体の交わりで、そこから全てが滅するような美しさが見えてくるようだ。
ラストの海辺の映像に映し出された艶やかな光の裏側には寂寥が潜んでいるのだが、その寂寥は決して拭い去ることはできず、行き先のない愛を光に溶かしてしまうしかない。が、そこに残された肉体は何のためらいも迷いもない"純粋"を残している。