饂飩粉

ケープタウンの饂飩粉のレビュー・感想・評価

ケープタウン(2013年製作の映画)
4.2
 南アフリカのケープタウンを舞台にした映画だから邦題は『ケープタウン』。なんとも潔いタイトルだし、劇中で行われていることを踏まえて「これがケープタウンだ!」と言っているのならこれほど恐ろしいものはない。
 主人公はオーランド・ブルームとフォレスト・ウィテカー演じる二人の警部(片方刑事だったかな)。
 女子大生が植物園で撲殺されるという凄惨な事件をきっかけに、二人がケープタウンの暗黒面へと足をズブズブ踏み入れていくお話。

 とにかく敵のギャング達がヤバすぎる。脳味噌が空っぽすぎて、「俺達は警察なんて恐れねえぞ」と手始めに主人公二人の同僚の警官(普段はデスクワーク?)の腕をズバーン! 後先考えない連中は次に何をするかマジでわからない。本当に怖い。免許持ってない奴の運転する車の助手席に座る方がまだマシ。
 そしてそんな連中に一切臆する様子を見せないオーランド・ブルームのカッコ良さよ……いつの間にイケメン担当からこんなワイルドな色気を醸すセックスマシーンと変貌したのだろうか。なんかルーク・エヴァンスに似てきている気がする(いや、逆か?)。

 一方のフォレスト・ウィテカー。こいつが多分この映画で一番恐ろしい存在である。
 ある哀しい過去が原因で生涯童貞を余儀なくされたこの男、普段は温厚だし、根っからの黒人差別主義者であった仕事場の上司に対しても寛大な態度を見せる非常にイイ奴。
 劇中では彼以外の登場人物は大体性生活を充実させている。オーランド・ブルームも、敵側のギャング達も、皆暇な時はセックスばかりしている(もしくは隣に裸の女がいる)。
 さて、皆がセックスしている時間フォレスト・ウィテカーは何をしているのかと言うと、売春婦っぽい女性を買ってひたすら尻をナデナデするか、自宅のルームランナーでひたすら走っているかのどっちかだ。どこに向かうでもなく走り続ける彼の姿に、劇中で明かされる壮絶な過去が嫌でも思い起こされる。
 そんな「温厚そうに見えて実はギリギリ」のフォレスト・ウィテカーのタガが、ひとたび外れてしまったら?
 散々逃げ回っていたことで鍛えられた足腰が、標的を追いかけるために走り出したら?

 止めるものは、もう誰もいない。彼の過去がそうさせるのか、性格がそうさせるのかはわからない。
 ただ、ショットガンを構えて敵陣に突っ込むのみ。
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