KnightsofOdessa

雪の轍のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

雪の轍(2014年製作の映画)
3.0
[] 60点

2014年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品、パルムドール受賞作品。ヌリ・ビルゲ・ジェイラン長編七作目。毎度ジェイランのインテリカス男への圧倒的解像度に驚嘆させられるが、その頂点は本作品かもしれない。カッパドキアでホテルを経営する地主の男アイドゥンは、元々イスタンブールで俳優をやっていたインテリで、今では誰も読まない地方紙にコラムを書いて暮らしている。冒頭から、少し遅れて出勤したメイドに"客への朝食は誰が出すんだよ"とキレながらロビーで新聞を広げ、いきなりエンジンがかかり始める。以降はアイドゥン、その若い妻で慈善家のニハル、出戻りの妹ネジラの三人のうち二人が場所を変え話題を変え互いを罵りあう様を延々と描き続ける。罵り合いだけでよく3時間分も脚本書けるなあと感心してしまった。各々の指摘は悪意がありすぎるし辛辣すぎるが凡そ正しく、だからこそ人間なのではないかという感じだし、凡そ全ての会話が"素直じゃないなあ"て片付く気がする。個人的には『うつろいの季節』の頃みたいにショットや心象風景で静かに破綻を語る作風の方も好きだったので、場面転換だけに自然風景を使う今のような作風は勿体ない気もする。あと、『About Dry Grasses』にはなかった"大きな挿話どうしの繋がり"が本作品にはあった(ニハルが家賃滞納一家を訪れる程度だが)。なんで退化してんだよと思いつつ、本作品ではネジラが言いたいこと言ってさっさと退場しちゃうのでトントンか。いやでも『About Dry Grasses』の同僚くんも空洞存在だったからな…ジェイランはいつも詰めが甘い気がする。
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