カウボーイ時代から素敵な出会いを経て、子供も2人授かり、優しいパパとして家庭を築くクリス。
その一方、軍の中でもエリートチームへ入り、スナイパーとして兵士としての素質を開花させていく。そして160人を殺した生ける伝説へとなるクリス。
相反する要素が混在していると、歪みが生まれていく。
その歪んでいく様がリアルであった。
あと、聴覚にトラウマが出る、というあたりとか。
それこそシモヘイヘじゃないけれど、やはりスナイパーのレジェンドというのにはロマンがある。
ただ、今作だとその中に殺しの格好良さだけではない、「子供よロケランを持つな…撃たなきゃいけなくなるから…」という、人間味が加味されているのが新鮮であった。
こういうレジェンドもまた良い。
戦争モノの、主人公チームを捕捉する視点でのカメラワークは、やはり緊張感が出るし、今回は敵にも凄腕スナイパーがいたためか、その良さが増していた。
音楽も米国らしいもの、臨場感ある銃声、そしてそれがクリスの様に見ている我々にも染み込んでいく…という点が興味深かった。
冒頭の親子のシーンとの被せ、銃声でのカットチェンジ、ラストの余韻、星の数、といった気の利いた演出も多かった。
総じてずば抜けないけど…でも良作、そしてもう一度観てしまう、みたいなイーストウッドらしい一本。
しかし、わりと世相とタイムリーだったので色々と考えるきっかけになった人も多いのではないか。
個人的には
熊さんゴッコしてー、で嫌な予感がして、ドアの外に明らかに良くない男がいた時に、どういう流れになるんだ。。。となったのが印象深い。
ブラッドリークーパーの瞳で語る演技に、ロビンウィリアムズの片鱗をみて、やはり瞳での演技は魅力的だと思った。
スナイパーライフルを覗く瞬間、彼は景色以外に何を見て、何を考えていたのだろう、という一本。