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フレンチアルプスで起きたことの708のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

ひたすらヴィヴァルディ「夏」のフレーズが繰り返し執拗に登場して、不安感を煽りまくって物語が展開していくことが、だんだん面白くすらなっていく極上ブラックコメディ。

ヴィヴァルディ「四季」の「夏」は、辛くて憂鬱な季節として夏を描いているそうです。気だるい暑さも蝿や蚊などの害虫も、雷を伴う激しい嵐も、人間の力ではどうにもならない耐え難い夏の憂鬱さはまさに「不可抗力(この映画の原題)」そのもの。

雪山での高級リゾート。2日目のランチタイムで妻や子どもたちを置き去りにして、人工雪崩から一目散に逃げた夫。その夜、夫婦と友達たちと呑んだときに妻から「この人は逃げたのよ」と指摘されても、男のプライドで「そんなことはしていない」の一点張り。そこからどんどん価値観のズレから関係が崩れて、夫も妻も本性が丸出しになっていく始末。どうにもできずに逃げられない憂鬱で耐え難い休暇になるという流れは、単に不安感を煽る音楽的フレーズだけでなく、ヴィヴァルディ「夏」のストーリーそのもの。かなりナイスな選曲です。

それにしても、雪崩のシーンにおいての夫は何度見ても最低で笑えます。自分のことしか考えてない逃げ方、雪崩が収まって、その場にいた客たちがみんな席に戻ってから、一番最後に何事もなかったように戻ってくるという。日を追うごと追い詰められる姿は、ちょっと可哀想でありながらも笑えます。
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