すごくよかった！めちゃくちゃ良質なダークコメディ。正に人生はクローズアップすると悲劇だけど引きで見ると喜劇だ。そんなチャップリンの名言がよく合う作品。
まぁこの主人公の夫がヒドい。雪崩から1人真っ先に逃げるのは勿論許せないが、パニックになって無意識に行動したっていうのはまだ分かる。でもその後にその事実を認めないっていうのは完全にアウト。あれができちゃうのって逆にすごい。
一瞬、事故の衝撃で本当に忘れてるのか？って思ったけどあれ絶対違うな。そう思い込もうとしてただけだと思う。
男としての、家長としての無意味なプライドなのか、チンケなものにこだわってしまったせいで家庭内の気まずさは更にドツボに。
最初は夫にイライラしてたけど、次第に哀れに思えていった。
クライマックス、夫が力技で半ばなし崩し的に和解を勝ち取るシーンが最高なんだけど、その後にあんな更に素晴らしい大オチが待ってるとは思わなかった。この監督、性格悪いなぁ。良い意味で。
随所に差し込まれたエピソードもどれも良かった。
巻き込まれて飛び火でケンカ始める友人カップルとか、主人公の奥さんと旅先でのアバンチュールを楽しむ人妻との議論とか、カフェで1番カッコいいと言われてニヤニヤ→訂正で鼻白むところとか。
一つ一つは本筋と関係なく見えるけど、流れで見ると全部繋がってるようにも見える。
音楽の使い方も素敵。基本は無音で唐突に流れるヴィヴァルディの『夏』。この曲がこんなにコメディに合うとは知らなかった。
ただ半裸の男達の熱い集会だけは意味分からなかったけど…。あれってフレンチアルプスでは普通なのかな？
