ノッチ

天の茶助のノッチのレビュー・感想・評価

天の茶助(2015年製作の映画)
2.5
人界の人の人生のシナリオを、天界の人がひとりひとり考えて書いていると言う。

天界のライター達のお茶汲みをしていた天使の茶助は、あるひとりの女性を助ける為に人界に降りたった。

天使の波乱万丈な人生が始まった。 

俳優にして『うさぎドロップ』などの監督業も手掛けるSABUが、自身の処女小説を自ら監督して映画化したファンタジー。 

人間の人生の脚本を書いて運命の左右を決めているライター達のお茶汲み係が、自分が好きになった女の子が交通事故死しちゃうってんで、その死から何とか救おうとする話。 

「人生、誰もが主人公だ」を地でいく作品。 

設定は面白く、地上に降りて様々な人の運命を変えて良いようにしていくという能力から、人々の強欲に巻き込まれ、命を狙われるようになってしまうと言うもの。 

天界で脚本家たちが~というのは、よくある設定だと思ったのですが、そこからのストーリー展開が、予測不能&突飛で、ぐいぐい引き込まれてしまいました。

タイタニックの真似して恋人を失うとか、茶助じゃなくても、そりゃ怒るわ!って、突っ込んでしまいました。

しかし、決して「人生=シナリオ通り」ではない!、運命なんて強い意志でぶち破れっていう本作品の主張はアピールがチョット足りなかった気がしましたね。 

後半、茶助の妹が一瞬だけ現れて言いたいことを言って帰って行きますが、彼女の台詞こそ監督であり脚本も書いたSABUさんの言いたかったことではないかと想像します。 

「人を救う力を見せてしまったなら、救われなかった人は逆にその人を恨むようになる」と言う、善意と善行に対する卓見が示されもするのですが……物語としては、テーマが発散したまま終わってしまったように思える。

ラストのオチも案外平凡です。

要はちょっと捻った現代版『人魚姫』。

そこに沖縄やら暴力やら名作パロディやらをスパイスに加えたというだけのこと。

描き方が淡白すぎて…ラストの見せ場にイマイチのれなかった。

松山ケンイチ・大野いと・伊勢谷友介の好演…一部の映像、楽曲の良さ等、所々ではキラリと光る部分もあっただけにちょっと残念。

とはいえ、全て沖縄でロケされたそうで、お祭りの様子や市場や路地の様子など、ローカルな雰囲気も併せて奇想天外な物語が楽しめた一本でした。

ちなみに、R12なのでちょっと指が飛んだりちょっとした殺し合いシーンがあります。

大人なら気にならない程度。
ノッチ

ノッチ