ひろぽん

百円の恋のひろぽんのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
3.6
32歳を過ぎても実家に引きこもって自墜落な生活をしていた女性の一子がボクシングと出会って変わっていく姿を描いた物語。


32歳で仕事もせず、実家暮らしでだらしのない生活を送る一子。実家を追い出され100円コンビニで勤務することになるも、そこはクズだらけの底辺な人間の集まりだった。たまたま通りかかったボクシングジムでトレーニングをしていたバナナマンと出会った事で一子の運命が変わっていく。

この作品の凄いところは、スポーツを扱ったテーマなのに周囲に自分の人生を変えてくれるような魅力的な人物が登場せず、グズが蔓延し誰一人として輝かしい人物が登場しないところにある。唯一ボクシングジムの人たちがみんなまともな人たちだったから自墜落な生活から抜け出し成長することができたのかもしれない。そんな劣悪な環境に負けずボクシングに魅力されていく一子の健気な姿がとても良かった。

猫背でボサボサ髪のだらしのない体型や服装をしていたのに、ボクシングを始めて目標を見つけシャキッとしたアスリートのような体型に変化していく成長も素晴らしかった。

初めての一人暮らし、初バイト、初体験、初恋人、初失恋と様々な新しい人生経験をしていく先に、口には出せない感情を全身全霊ボクシングにぶつけていく姿は獣のような狂気を感じた。

殴って殴られて痛みを知り、初めて生きてる実感を感じるのだろう。

この作品自体安藤サクラの独壇場で、彼女の見せるキレのある美しいリズミカルなシャドーは感動してしまった。勤務中にまでシャドーしてる姿が気持ち良い。

新井浩文はこういうダメ男の役が最高に似合ってる。

試合後の2人のやり取りからクリープハイプの『百八円の恋』の“痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い”とエンディングに繋がるラストは感動的だし、一子の感情を表しているような歌詞がとても良かった!

物語のほとんどが目を瞑りたくなるような酷い描写だけど、それを振り切る最後の40分ほどのボクシングにかける熱い思いが憂鬱な感情を飛ばしてくれて良かった。

100円コンビニの店長を一子がぶん殴るシーンがカッコ良くて1番好き!

心が元気な時に鑑賞をオススメする作品。
“勝ちだがっだァァァ”(༎ຶ⌑༎ຶ)
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