ひろぽん

サバイバルファミリーのひろぽんのレビュー・感想・評価

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
3.5
ある日、東京で突然電気が消失するという異常事態が発生する。交通機関はストップし、ガス、水道も使えなくなってしまう。世間が大混乱に陥る中、東京に暮らす平凡な一家の鈴木家4人は、水も食料も尽きかけ生き残るために家族と共に妻の実家にある鹿児島を目指し、東京を脱出しようとする物語。


電気が消滅しインフラが完全に機能しなくなってしまった世界線でサバイバル生活を描いたテーマの着眼点が非常に面白いなと思った。

ROLEXの高級腕時計や高級車、ブランドモノのバッグよりも水や食料の方が価値のある世界。何でもかんでも文明の利器に頼りすぎている現代人が直面したらこうなるだろうなという、もしもの世界が興味深く引き込まれていく。

頼り甲斐がなく冴えない父、天然だけど生きる術を持っている強き母、無口だけど知恵のある息子、スマホに依存して口のうるさい娘。一緒に暮らす4人家族だが皆バラバラのありふれたごく普通の家族が、電気の消滅した世界でサバイバルをしていく。

電気、水道、ガス、トイレ、電車やバス、飛行機等の公共交通機関、電話などのありとあらゆるものが使えないという環境は恐ろしく、自分ならどうするだろうかと考えながら鑑賞していた。

2Lの水が2000円と高額で販売されていたり、お店で現金のみの取り扱い、移動手段が自転車になるなど、震災が頻繁に起こる日本では実際に起こり得る話で、他人事ではないなと感じた。

東京から大阪へ向かう旅の途中で出会う、鈴木一家と対照的なサバイバル生活を楽しんでいる斎藤一家との出会いのシーンは面白かった。困難な状況でも生きる知恵を持ち合わせているだけで生活の水準が変わるのは凄い。その家族の中でも藤原紀香のキャラが最高にマッチしていて笑った。

岡山で出会う自給自足をしている農家のおじいちゃんは田舎で長年生活をしており、昔ながらの知恵を持ち合わせている人はやっぱり逞しさが格段に違う。

葵わかな演じる娘が久しぶりの温かいまともな食事に行き着いた時の涙は良かった。どれほど嬉しかったのか想像ができる。

電車やバスなどの公共交通機関が止まっているのに空港へ向かったり、沿岸沿いの国道を走っていれば迷わないはずなのに川を渡ろうとする等の、登場人物たち全員がバカすぎるというツッコミ所の多さも目立つ。

“お父さんはそういう人なんだから仕方ないでしょ”という母の呆れきった強烈なパンチラインが長年の夫婦関係を見事に表現している。亭主関白気質で偉そうにしているのに、計画性も頼りがいも威厳もない父に対する皮肉が最大限に伝わる一言が見事に刺さっていた。

バッテリー補充液や精製水が非常時に飲めるという雑学は勉強になった。

重くなりそうなテーマを軽く見やすくしてある工夫は見事だったし、非常事態の時に備蓄が必要だという防災にも繋がる内容が良かった。

2年と126日後のサバイバルを経験して逞しく人間として成長するも、復旧してからは元の便利な生活に簡単に戻ってしまうのだろうな。様々な経験をすると実家から送られてくる食材のありがたみに感謝できるようになるんだな。

テーマは面白いけど、登場人物のキャラも薄くイマイチパッとしない作品。
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