ずっと観たいと思っていて、やっと鑑賞。
出てくる男が尽くクズばかりなのが凄いw
一子(安藤さくら)もそんなクズの中にいる女だが、汚れていない。
そもそも汚れるほど動かないニートの32歳。
追い出される様に一人暮らしを始め、仕方なくいつも行く百均で深夜バイトを始める。
近所にあるボクシングジムで偶々見かけた狩野(新井浩文)とズルズルと付き合い始める。
32歳になってから、やっと人生が動き始める人も世の中にはいるんだよな。
だから「加減」が分からない。
普通なら、何年もかけて、少しずつ楽しんだり苦しんだりする体験を経てたくましくなるんだが
一子みたいな「突然世の中に放り出されたヤツ」は、どこにどんなチカラを入れて(抜いて)生きたらいいかを知らない。
だから全力でぶつかり合うボクシングみたいなドストレートなものに魅せられてしまうのかも知れない。
痛みも苦しみも、それを乗り越える辛さも喜びも、何にも味わった事が無いニート人生のヤル気スイッチが入ってしまったら、納得するまで止まらないのかも知れない。
でも、それでも良いのよね。
艱難辛苦や喜怒哀楽を知らずに生きるより、ずっと人生に彩りが生まれる。
実際、狩野と暮らし始めた一子の部屋はテレビが増えたり、カーテンらしきエスニックな布を垂らしてみたりと、変化が生まれていた。
ボクシングほどの強烈な体験でなくても
自分の中に灯った小さな明かりを抱きしめて生きれたら、その人はそれで良い。
安藤さくらの俳優魂が凄い。
新井浩文は、今見るとそれほど上手い訳でもなく中途半端。
今となっては、そのクズ男っぷりが実はリアルでもそうだったのね、と納得できるが。
後半クライマックスで、ダウンした一子に狩野が「立て‼︎」と叫ぶのは、朦朧とした一子が見た願望妄想と思いたい。
狩野自身が自分に言い聞かせている、なんて、そんなムシのいいファンタジーにしてしまったら、捨てられて頑張ってきた一子が救われない。
最後も手を繋ごうと手を伸ばしてきた狩野を左フックでブチのめしたって良かった気がする。
そこでメソメソ泣いちゃう一子も成長した証なんだろうか。
