オルキリア元ちきーた

ジュリアンのオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

ジュリアン(2017年製作の映画)
3.5
これをサスペンスと呼ぶべきなのだろうか?

親権問題というテーマと
DVの底知れない不安と恐怖を
付き纏われる母子の姿を通して
私達に晒してくる。


ジュリアンは離婚した夫婦の子供であるが故に
一人でその大人達の醜い攻防の矢面に立たされる犠牲者。

大人達は親権を争うという大義名分のもと
憎悪と支配欲をぶちまけ続ける。

支配欲の権化となった夫は、その父親から受け継いでしまったその残虐さを振り翳し
暴力装置の様な夫から逃れる母親もまた
ジュリアンを犠牲にして逃げ続ける。

DVは夫婦だけの問題ではなく
歪な親子関係の負の遺産であることを教えてくれる。
親から愛されなかった「成仏していない子供時代の孤独」が肥大して、大人になっても被害者精神だけが一人歩きしていく「治せない心の病」となって広がり続ける。

俗に言う「アダルトチルドレン」の成れの果ての悲劇なのだ。

ジュリアンの様な恐怖を体験した子供達が、また大人になった時に
その心の傷を抱えたまま、また新しい家族を作ることで、その負の遺産を発動させない為に、出来る事は何なのか?

それは私達に突きつけられた宿題かも知れない。